Point
■中国の研究者が有機化合物COFを改良して、新しいタイプの人工筋肉を開発した
■これはPolyCOFと呼ばれる素材で、エタノールの蒸気濃度に反応して収縮、弛緩を繰り返す
■反応性や耐久性が従来の素材より向上しており、研究者たちはこの素材による膜で紙の人形にスムーズな腹筋を繰り返させることに成功した
人工筋肉は、ロボットや義肢、パワードスーツなど次世代の技術に欠かせないものとして現在盛んに研究が進められている分野です。以前取り上げた、MITの研究チームの人工筋肉ファイバーもそうした研究の一環になります。
そして現在世界中の研究者たちが熱望しているのが、軽量で反応性の高い新しいタイプの人工筋肉です。
今回発表されたのは、ポリマーを添加された有機化合物の膜で、エタノールの気体濃度に反応して伸縮する新しい軽量有機材料です。研究者たちはこれを利用し、紙の人形が腹筋をするユニークな動画を作成しています。
この研究は中国の南開大学の研究チームにより発表され、アメリカ化学会の論文誌ACS Central Scienceに6月25日付けで掲載されています。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscentsci.9b00212
穴の空いた膜
今回研究に使用されているのは、共有結合性有機骨格構造(COF)と呼ばれる素材です。
名前だけだとよくわからない化合物としか感じられませんが、これは多孔質という小さな穴がたくさん開いた分子構造の材料で、軽量で耐熱性があり形状の制御などが容易という優れた特徴をいくつも持っています。
化学的に安定していて、構造に添加できる化学物質の選択肢が多いCOFは、設計自由度が高く、多くの化学者に研究対象とされている材料でもあります。
今回の研究者たちは、これを人工筋肉として利用する方法を検討していましたが、COFはそのままの利用では非常に脆い素材です。また、実用に足るような大きいサイズの成形ができないなどの欠点も持っていました。
しかしこのCOFに対して、ポリエチレングリコールというポリマー(高分子の化合物)を添加することで一気に状況が変わったのです。