Point
■人間が認識している現実は「客観的事実」ではない
■人間の脳は、生存に必要なものを見るために構築するよう進化してきた
■意識こそが神経活動を生み出している
今、目の前に見えている世界は現実なのでしょうか?
あなたに見えている世界と、別の人に見えている世界は、まったく異なるはずです。私たちが今認識しているこの世界は客観的事実ではありません。
たとえば下のイラスト。奥行きがあって、ぐるぐる動いているように見えませんか?
実はこれ、平面的で静止しているイラストなのですが、脳にいくらそう言い聞かせてもやっぱりそうは見えませんね。
カリフォルニア大学アーバイン校で視覚科学を研究するドナルド・ホフマン氏は、自身の新著”The Case Against Reality”の中で、この概念を人間の意識すべて(つまり、私たちがどのようにして周囲の環境を見て、考え、感じ、相互に作用しているか)に当てはめています。彼によれば、私たちは物事をすべて「誤って」見ているというのです。
意識こそが神経活動を生む
「私は、人間の意識的経験と、環境と相互作用する時の意識的経験と身体や脳の活動との関係に関心を持っています。その中には、人間の意識を真似るコンピュータモデルを制作するという技術的挑戦も含まれていて、現在まさにそれに取り組んでいるところです」と、ホフマン氏は語っています。
現代科学のアプローチでは、「ナッツの味」や「赤い色の見え方」といった物事を人間に経験させる神経活動のパターンが存在すると仮説されています。
しかしこれに対しホフマン氏は、このことを説明できる正式な理論は存在しないと主張しているのです。
「私は一人の科学者として、ある理論を仮定した上で、その有効性を確かめるためにその理論が間違っていることを証明しようと試みます。意識を生み出す神経活動のパターンを説明する数学的理論は1つも存在しないため、私たちは誤った仮定をしているのかもしれません」と語るホフマン氏。
従来の仮説とは反対に、「意識こそが神経活動を生み出している」というのが彼の考えです。つまり、人間はあくまで生存に必要なものを見るように進化してきたということ。これは魂の存在が云々の話ではありません。認識されているものは必ずしも現実ではなく、あくまでもユーザーインタフェースだということなのです。