Point
■フランス領ポリネシアの海で、母イルカが孤児になっていたクジラを養子にしていた
■別種の動物を養子にする例は極めて稀で、動物界では2006年に見つかった猿の事例以来で2例目
■クジラは実際の子供である子イルカよりも、長期にわたって母イルカのもとにいた
意外な養子縁組が実現していました。
バンドウイルカの母親は、動物界で教育熱心で、思いやりがある性格で知られています。彼らは何年もの間、子供たちに食事を与え、外敵から守り、一緒に遊んであげるのです。
しかしこのような特性をふまえても、今回の例には専門家も驚きを隠せませんでした。
なんとバンドウイルカの母親が、孤児になっていたカズハゴンドウの子クジラを養子にしていたのです。
母親が別種の動物を養子にする実例は、2006年にマーモセットの子猿を世話していたオマキザルの母親に続き2例目となります。
研究の詳細は、6月25日付けで「Ethology」に掲載されています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/eth.12916
この養子縁組が見つかったのは、フランス領ポリネシアの海岸です。
海洋研究グループのGEMMが、バンドウイルカの群れの追跡調査を行なっていた最中に見つかりました。彼らが見たのは、母親のバンドウイルカが、実際の子供と一緒にカズハゴンドウの子供を引き連れていた衝撃の場面でした。
映像を見ても、子供のイルカとクジラが兄弟のちぎりでも交わしたかのように、母親の腹部にピタリとくっついて離れない様子がうかがえます。研究者によると、イルカの母親は一度に1頭しか子育てをしないのが一般的なため、この光景には二重に驚かされたとか。
さらに子クジラは、母イルカが属するおよそ30頭ほどの群にも仲間として馴染むことに成功していました。またクジラは海上に顔を出したり、波に飛び乗ったりと、他のイルカたちと同じような行動形態までものにしていました。
母イルカと子クジラの愛情は非常に厚く、子イルカが1歳半で親離れした後もクジラが離れることはありませんでした。しかし2018年の4月に、クジラも母イルカの元を去ったそうです。
哺乳動物にとって、子供のためにミルクを作ることは非常にエネルギーを要するプロセスであるため、別種の個体をこれほど長期にわたって世話し続けたのは異例中の異例です。
それでも母イルカがクジラを養子にしたのはなぜでしょうか。
GEMMの研究員は「孤児となったクジラがイルカの母性本能を引き起こしたことが原因だ」と指摘します。母イルカ自身が、子供を産んだちょうどその時期に孤児となったクジラと出会ったことで、子供として受け入れる態勢が整っていたとのこと。
今は離れ離れになっていますが、母の教えのもと元気に暮らしていることでしょう。たまには母イルカのもとに里帰りしてあげてほしいものです。
reference: zmescience / written by くらのすけ