暗黒物質はいつ生まれたのか?
今回の研究では、暗黒物質はビッグバン以前の宇宙で誕生したと予想しています。つまりはインフレーションのときに生まれたのです。
多くの素粒子はビッグバンによって生まれましたが、実はそれ以前のインフレーションの中で生まれた粒子が、現在ただ1つだけ確認されています。
それはあらゆる物質に質量をもたらしているヒッグス粒子です。このため、重力もビッグバンより前に生まれた力であると考えられています。
ヒッグス粒子はスカラー粒子と呼ばれるタイプの粒子ですが、暗黒物質もヒッグス粒子と同様にスカラー粒子の可能性があります。このことから、暗黒物質はビッグバン後に誕生した物質や力とは相互作用を起こさず、インフレーションで生まれた重力とだけ相互作用を起こす、と考えられるのです。
こうした予測は数学的シナリオによって支持することができるといいます。
もし暗黒物質が、ビックバン以前に作られた物質だとすれば、量子実験では発見することが相当困難であると考えられます。事実、暗黒物質は、これまであらゆる量子実験で、見つけ出すことができませんでした。
しかし、天体観測によって存在を明らかにできる可能性があります。
2020年に欧州宇宙機関(ESA)によって打ち上げが予定されている、宇宙船「ユークリッド」は暗黒物質の調査を目的としています。この調査により暗黒物質の起源が明らかになる可能性があります。
未だに何が何だか分からない暗黒物質。しかし、その姿は少しずつ浮き彫りになって来ているのかもしれません。