Point
■これまでの観測記録を破る最高齢の星が天の川銀河から発見された
■星の年齢は鉄の含有量によって計測されるが、これまで最高齢とされた星は2018年11月に報告されたもので、鉄含有量は太陽の11750分の1だった
■今回発見された星は鉄含有量が太陽の150万分の1で、桁違いに低く、宇宙とほぼ同年齢と言えるほどに古い星だという
これまでの観測史上で最高齢となる星が、天の川銀河の中から発見されました。
天の川銀河では、半年ほど前にも史上最高齢と言われる星が発見されていたのですが、僅かな期間でこのご長寿ランキングは大幅に塗り替えられることになりました。
星の年齢測定で決め手となるのは鉄の含有量です。鉄は星の核融合からしか作り出すことができないため、鉄が少なければ少ないほどその星は古いという判断が下せます。(金属量と星の年齢について詳しく知りたい人は、こちらの記事を参照してください)
地球から約35000光年離れた位置に発見された赤色巨星『SMSS J 160540.18–144323.1』は、鉄の含有量が太陽の150万分の1しかありません。これまでの最高記録は半年前に発見された『2MASS J18082002−5104378B』で、こちらは鉄の含有量が太陽の11750分の1でした。
これだけでもどれほどの記録更新かは明らかでしょう。150万分の1というと、オリンピックで使われるプールに対して、ほんの一滴に当たるほどの僅かな量です。
この星は、おそらく宇宙とほぼ同年齢と考えてよいほど古いと推定されています。
この研究は、オーストラリア国立大学の天文学チームにより発表され、『英国王立天文学会月報』に7月17日付けで掲載されています。
The lowest detected stellar Fe abundance: the halo star SMSS J160540.18−144323.1
星の種族
多くの人にとっては馴染みの薄いものかもしれませんが、星には金属の含有量を基準とした「種族Ⅰ〜Ⅲ」という分類があります。
種族Ⅰとは、金属(ヘリウムよりも重い元素。一般的に金属ではないが、天文学ではまとめて金属と呼ばれる)を多く含む星のことで、一般的な恒星。私達の太陽もここに含まれます。
種族Ⅱとは、金属が極端に欠乏している星で、今回発見された星も種族IIです。
種族Ⅲとは、金属を一切含まない、水素とヘリウムのみで構成された星。理論上の存在で、観測されたことはありません。これが宇宙最初の天体に分類されるもので、第1世代の星です。
つまり、種族Ⅰが新しく種族Ⅲがとても古い星ということになります。番号が増える方が古くなるというのは、直感的に分かりづらいですが、これはこの分類法が誕生した当時は、まだ金属の含有量が星によって異なる理由がよくわかっていなかったためです。
今回発見された『SMSS J 160540.18–144323.1』は、ビッグバン後のおよそ数億年以内に誕生した可能性が高いと考えられる第2世代の星になります。
古いと言いながら第1世代じゃないのかよ? と思う人もいるかも知れませんが、第1世代(種族Ⅲ)の星はビッグバン直後の高密度な宇宙で生まれ、大質量で非常に速いペースで核融合を行っていたため、数百万年から数千年程度で超新星爆発を起こしていたと考えれます。
このように種族Ⅲの星は、とても短命だったため現存はしていないというのが現在の天文学の考え方です。
なので、私達が観測可能な宇宙最古の星は第2世代(種族Ⅱ)の星からということになります。
ちなみに金属量から計算すると、私達の太陽はビッグバンから大体10万世代に当たる星です。