Point
■未だ謎の多い暗黒物質だが、実はビッグバンよりも古い物質である可能性が出てきた
■暗黒物質は、ビッグバン以前の宇宙インフレーションにより誕生したスピン0のスカラー粒子の可能性がある
■このスカラー場を利用した数学的シナリオに従えば、暗黒物質が重力のみで物質と相互作用するモデルについて説明することができるという
暗黒物質は宇宙最大の謎とも言える存在で、数多くの物理学者、天文学者たちとって非常にホットな研究テーマです。
そのため、数多くの仮設が生み出されています。「暗黒物質の正体!」という話題は、なんだか毎週のように聞いている気もしてしまいます。
今回発表された研究では、暗黒物質は宇宙誕生の原因と言われるビッグバンよりも前に誕生していた可能性があるというのです。
ビッグバンはまさに「宇宙爆誕!」と言うべき現象で、この爆発によって現在世界を満たす基本的な素粒子や、世界を支配する力が生み出されました。
暗黒物質がこのビッグバンとは別に生まれたとなると、重力以外で物質と相互作用を持たない不思議な性質についても説明がつくと言います。
この研究は、アメリカ合衆国ジョンズ・ホプキンス大学の研究者より発表され、アメリカ物理学会が発行する権威ある学術誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に掲載されています。
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.123.061302
ビッグバンより前の世界
ビッグバン理論の一般的な説明では、初期宇宙は高温高圧の小さな火の玉の状態で、これが爆発的に膨張して現在の宇宙ができたとされています。
宇宙に存在する物質の元となった素粒子、また電磁力や弱い核力などの力は、このビッグバンによって誕生したと言われています。私達の目にする現在の宇宙は、この瞬間に誕生しました。
しかし、この初期宇宙の火の玉とは一体何なのでしょう?
ビッグバンより前の宇宙の状態については、インフレーション理論という別の理論で説明されています。
この理論では、そもそも大元の宇宙は無から誕生した素粒子よりも小さい点であったと言われています。
なんで生まれたの? と思ってしまいますが、何もない無でも対生成と対消滅という現象によってゆらぎが発生しています。
なんで、なんかそんな感じで生まれてきたのでしょう。
いきなり投げんなよ、と言われそうですが、この辺りはまだ物理学者たちも上手く説明できていません。
この点の宇宙は、真空のエネルギーを持っていたため、誕生とともに急速に膨張を始め、誕生から10-44秒から10-33秒ほどの時間で直径1cmほどの火の玉になったのです。これがインフレーションと呼ばれる現象です。
ビッグバンはこのあと、インフレーションによって発生した莫大なエネルギーを元にして起こります。そして、このビッグバンによる宇宙の膨張は、138億年経った現在も続いています。