Point
■最初期の人類アウストラロピテクス・アナメンシスの、ほぼ完全な頭蓋骨がエチオピアで発見される
■ルーシー以前の状態の良い化石はこれまで見つかっていなかったため、この発見が進化のシナリオに対して与えてくれるヒントは大きい
■調査チームは頭蓋骨を基に、アウストラロピテクス・アナメンシスの頭部を再現した
380万年前の初期人類の、非常に状態の良い頭蓋骨が、エチオピア北東部で発見されました。
アウストラロピテクス・アナメンシス(アナメンシス猿人)として知られるこの種は、これまで頭蓋骨や歯のかけらなど不完全なものしか見つかっていなかったため、この発見が人類進化の謎の解明を1歩先に進めてくれることが期待されています。
クリーブランド自然史博物館などのチームが、この骨をもとに頭部を復元し、「Nature」にて論文を発表しています。
A 3.8-million-year-old hominin cranium from Woranso-Mille, Ethiopia
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1513-8
Age and context of mid-Pliocene hominin cranium from Woranso-Mille, Ethiopia
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1514-7
硬い食物に適した頭蓋骨
「非常に良い状態」といっても、当初は頭蓋や頬骨などはバラバラに発見されました。それらをパズルのように組み合わせることで、これまでにないほど状態の良い頭部が完成したのです。
調査チームはこの頭部の形態学的な特徴を、「ルーシー」が属することで有名なアウストラロピテクス・アファレンシスを含む初期の人類の化石と比較しています。
その結果、これがアナメンシス猿人のものであり、その裏付けとしての年代も一致していることが分かりました。
写真から分かるように、380年前当時の人類の頭蓋骨は現代の私たちのものとは大きく異なり、どちらかといえば類人猿に近くなります。このことから、いわゆる「ヒト」の形に頭蓋骨が進化したのは進化の後半であったことが推察できます。
この頭蓋骨が他の初期人類と異なる点は、そのサイズと構造です。イヌ科と同程度の大きさの頭蓋骨は、長く強固な作りとなっています。これは、非常に硬い食べ物を噛むことに耐えうる構造です。
過去の研究でも、アナメンシス猿人の歯が植物中心の食事に適していることが示唆されていましたが、今回の発見により、その予測が裏付けられることとなりました。
マックス・プランク研究所の古人類学者、ステファニー・メリージョ氏は、「彼らは非常に硬い食物を処理するために、こうした巨大な顔になっていたのです」と語っています。