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なぜ電話に出ない若者がいるのか / Credit:Canva
psychology

「電話に出ない」若者の心理

2025.08.07 20:00:43 Thursday

「息子や娘に電話しても出ない」

「職場の新人はなんでもメールで済まして、直接電話してこない。礼儀がなっていない」

そんな風に感じたことはありませんか?

スマートフォンが手放せない若者たち。

しかしその一方で、電話が鳴っても出ない、あるいは電話をかけること自体を避ける傾向が強まっています。

これは単なるマナーの問題ではなく、コミュニケーションの在り方そのものが変化していることを示しています。

この現象を分析したのは、フランスのロレーヌ大学の教授アンヌ・コルディエ氏です。

彼女は若者の「電話を避ける行動」に隠れた社会的・心理的背景について解説しています。

Teenagers no longer answer the phone: is it a lack of manners or a new trend? https://theconversation.com/teenagers-no-longer-answer-the-phone-is-it-a-lack-of-manners-or-a-new-trend-262718

なぜ電話に出ない若者がいるのか?

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電話に出ない若者の心理は? / Credit:Canva

15歳の女子高校生レアさんは次のようにコメントしています。

「電話が鳴っても、出るのは母親か緊急事態のときだけ。それ以外はまず出ません」

実はこの言葉の背後には、現代の若者が電話を避ける明確な心理的・社会的理由があります。

若者にとって、スマートフォンは「通話する道具」ではなく、「テキストやSNSでのやり取りのための道具」として機能しています。

一方、電話はリアルタイムの応答を求められるものです。

準備なしに会話を始めなければならず、自分の言葉や感情を即座に処理する必要があります。

内容が整理できないまま話さなければならないという状況は、特に感受性の強い若者にとっては心理的負荷となります。

「うまく言葉が出なかったらどうしよう」「気まずい沈黙があったら困る」「言い過ぎたらどうしよう」

こうした不安が、通話を避ける理由になっているのです。

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電話では自分の言葉や感情を即座に処理し、伝える必要がある / Credit:Canva

対称的に、テキストメッセージやSNS、ボイスメモといった非同期型のコミュニケーションは、相手との距離を保ちつつ、自分のペースでやり取りができます。

メッセージを打つ前に考える時間があり、言い直せます。

絵文字で感情を柔らかく表現することさえできます。

これは、若者にとって「安心して感情を伝える手段」であり、「自己表現のコントロールが可能な環境」なのです。

16歳のメディさんも次のようにコメントしています。

「父親から電話がかかってきても、正直気が重い。

質問攻めにあうのがわかっているから、終わった後にLINEで返信する」

これは父親を嫌っているわけではなく、自分の感情リソースを守りながらコミュニケーションしたいという意思表示にほかなりません。

こうしたコメントから分かるのは、若者にとって電話を取らないのは、「無関心」でも「反抗」でもないということです。

むしろ「適切なタイミングで、適切な形でつながりたい」という、極めて繊細な人間関係のマネジメントなのです。

では、世代間の感覚のズレをどのように調整できるでしょうか。

次ページ電話に出ないことはマナーの欠如か? それとも新しいコミュニケーションの形か?

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