困難を極めたデータ収集
失われた大アドリアの再構築を困難にしたのは、それがスペインからイランまで、現在の地図上の30カ国を超える国々にまで散らばってしまったという事実です。散らばった岩と同様に、データもそれぞれの国が持つものであるため、その統一は簡単なことではありませんでした。
新たな研究の中で、研究者たちは10年以上にわたって大アドリア大陸に由来していると考えられる岩のサンプルの年代情報の収集を続けました。
さらに、岩に閉じ込められた磁場の方向を調査することで、岩がいつ形成されたのかだけでなく、どこで生み出されたのかが明らかになったのです。
分析の結果、アフリカ大陸から分裂した大アドリアは、単に北に向かったというよりは、プレートを押しのけながら反時計回りに動いていたことが判明しています。
また、大アドリアが「失われた大陸」であることを示唆する研究は他にもあります。別の研究では、地震波を利用して、マントルに沈んだ地殻の断片をコンピューター化したトモグラフィー(断層映像法)で示すことに成功しているのです。
その研究により、かつて大アドリアを形成した岩の断片が、私たちが住む地表から1500キロメートルも下に今なお眠っていることが分かっています。
2億年近くも前のことですから、残念ながら大アドリアに人類の文明が築かれていた可能性はゼロに近いでしょう。それでも、今は亡き未知の生命たちが暮らしていた可能性は大いにあります。
これぞ、ロマンですね。