Point
■スペインのプルピ(Pulpí)にある巨大晶洞は、人が立ち入れる晶洞としては世界最大級
■プルビの晶洞は活動的な地質ではなく、完全に化石化した環境にあるため、これまで形成過程を分析することが難しく多くが謎に包まれていた
■最新の研究では、この晶洞がオスヴァルド熟成という熱力学的現象で形成されたことを説明しており、形成が始まった年代は560万年前と推定している
クリスタルの洞窟は、RPGのようなゲーム世界ではよく見るシチュエーションです。しかし現実の世界にも、まるでCGで描いたような美しい晶洞が存在するのです。
スペインのプルピでは、銀鉱山の50メートルほど地下から美しい晶洞が発見されています。これは人類が立ち入れる晶洞としては世界最大級のものです。
こうした晶洞は地質学的にも非常に興味深い地形ですが、完全に化石化したこれらの洞窟はどのように形成されたかを調べることがかなり困難で、いつどうやってできたのかという部分は謎に包まれています。
最新の研究では、プルピの晶洞を取り囲む鉱山の地質構造をマッピングして、この晶洞の地質学的歴史の再構築を行っています。それによると、この晶洞は形成が始まってまだ最大200万年程度しか経っていないかもしれないというのです。
この研究論文は、グラダナ大学の地質学者García Ruiz氏が統括する研究チームより発表され、10月15日付けで米国地質学会の学術雑誌「Geology」に掲載されています。
https://doi.org/10.1130/G46734.1
クリスタルの洞窟
スペインのプルピにある晶洞は、晶洞としては世界第2位の大きさであり、人が入れる晶洞としては世界最大規模のものです。
ただ、晶洞としては大きくても、洞窟の規模としてはかなり小さめです。結晶は11mほどの洞窟に槍のように突き出していて、中央に卵型の小部屋があるだけで、人が動ける範囲はほとんどありません。
世界最大と言われる晶洞は、メキシコのチワワ州ナイカ鉱山の地下300mにあります。ただ、この晶洞は地質学的にも活動的な場所にあり、マグマによって熱せられた地下水に満たされています。1985年にポンプで熱水が抜き出されましたが、未だに内部の気温は50℃超、そして湿度は100%とという、人が容易には近づけない環境にあります。
ナイカ鉱山の晶洞については、この熱水が結晶を成長させた原因と考えられていて、結晶形成が始まったのは60万年程度前という推定がされています。
しかし、プルピの晶洞は完全に化石化した環境にあり、どうやって形成されたか調べることが困難となっていました。