- 霊長類の歴史には、身長3m、体重600kg近くある「ギガントピテクス・ブラッキー」という種が実在した
- 化石のDNA解析の結果、ギガントピテクス・ブラッキーは、人間よりもオランウータンに近いことが判明
1924年、アメリカ・ワシントン州で初めて目撃されたという未確認生物・ビッグフット。
身の丈は2mを優に越え、体重は300kg近くあるとされますが、その存在はいささか信憑性に欠けています。しかし長い歴史の内には、ビッグフットをはるかにしのぐ巨大な霊長類が確かに実在したのです。
上の写真の化石は、1935年に中国南部で発見された「ギガントピテクス・ブラッキー」という霊長類の下顎に当たります。この生物は、身長3m、体重300〜600kgという規格外のサイズを誇っており、まさに「史上最大の霊長類」と呼べるでしょう。
化石標本の少なさから、これまでに分かっている情報は微々たるものでした。
ところが今回、コペンハーゲン大学(デンマーク)により、ギガントピテクス・ブラッキーを霊長類の系統樹の中に位置づけることに初めて成功しました。
それによると、彼らは、私たちヒトよりも現代のオランウータンの近縁に当たることが判明しています。
研究の詳細は、11月13日付けで「Nature」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1728-8
人間よりもオランウータンに近かった
現在までに発見されているG・ブラッキーの化石は、部分的な顎骨が4つと歯が数千本のみです。その他、頭蓋骨や腕、脚の骨は一切見つかっていませんが、発掘場所から彼らの生息地は、東南アジアの亜熱帯地方であったことが分かっています。
研究チームは、G・ブラッキーが霊長類の系統樹においてどこに位置するかを特定するため、DNA解析を行いました。具体的には、歯のエナメル質からタンパク質の配列を再構築するという方法です。
これを約190万年前のG・ブラッキーの臼歯と現代に生きる霊長類の臼歯にそれぞれ応用し、結果を比較しました。研究主任のエンリコ・カペリーニ氏によると「配列の差が小さいほど、2つの系統が近いことを示す」そうです。
その結果、G・ブラッキーは、人やチンパンジー、ボノボの系統よりも、オランウータンに非常に近い種であることが判明しました。
上の図から、人とオランウータンの進化線は、1400万〜1300万年前に分岐していますが、研究チームは「G・ブラッキーとオランウータンも1200万〜1000万年前頃に別れた」と結論づけています。
その後、オランウータンは今日まで生き残り、G・ブラッキーは絶滅したと考えられます。
少ない情報から専門家たちは、G・ブラッキーの絶滅時期を約30万年前と予測していますが定かではありません。もしかしたら、彼らは森の奥深くでひっそり生き延びている可能性もあります。
すると、たびたび目撃談の上がるビッグフットとは、G・ブラッキーの子孫なのかもしれません。