- ブタの胚にサルの遺伝子細胞を注入し、世界初となる「キメラ・ピグレット」が誕生
- キメラ実験の目的は、移植用として、ヒトの臓器を動物の体内で育てることにある
中国の研究チームにより、サルの遺伝子を持った子ブタ「キメラ・ピグレット」が誕生しました。
2種のハイブリッドではありますが、ブタの胚に「カニクイザル」と呼ばれるサルの遺伝子を組み込んでいるので、基本はブタとなります。
研究主任のTang Hai氏によると、「このキメラは、妊娠満期で生まれたハイブリッド種としては世界初となる」とのこと。
こうしたキメラ開発は、単なる実験ではなく、私たちにとって重要な役割を持っています。
研究の詳細は、11月28日付けで「Protein & Cell」に掲載されました。
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs13238-019-00676-8
2頭のキメラ・ピグレットが誕生
研究チームはまず、カニクイザルの細胞を遺伝子的に培養し、GFP(緑色蛍光タンパク質)を作成。GFPとは、蛍光性を持つタンパク質のことで、これを使えば、GFPを持つ細胞とそこから増殖して生まれた細胞を追跡観察できます。
つまり、キメラ・ピグレットがサルの細胞をどれだけ保有しているかを簡単に調べられるのです。
その後、チームは、カニクイザルの胚性幹細胞を、受精5日後のブタの胚に注入しています。
実験では、4000以上の胚に細胞を注入しており、結果、生まれたのは10頭、その内の2頭がキメラ・ピグレットとなりました。しかし、残念ながら、10頭すべてが1週間以内に亡くなっています。
2頭のキメラ・ピグレットにおいては、心臓や肝臓、脾臓、胚、肌の一部にカニクイザルの細胞が確認されました。割合は低く、ブタの細胞1000〜1万個につき、サルの細胞が1つといったところです。
キメラ・ピグレットの詳しい死因は不明ですが、Hai氏は「2頭以外もすべて死んでいることから、原因はおそらくキメラ化よりも、IVF(体外受精)にある」と指摘します。