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- 6種類のインフルエンザから保護できるワクチンが開発された
- 新ワクチンは長期的かつ普遍的なワクチンの可能性を秘めており、万能ワクチンの開発に繋がるかもしれない
毎年多くの人がインフルエンザによって命を落としています。インフルエンザにはたくさんの型があるので、予防接種が必ずしも効果を奏するわけではありません。
世界中の人が、あらゆる型に対応するインフルエンザワクチン「ユニバーサルインフルエンザワクチン」を望んでいます。
そんな万能ワクチンへの足掛かりとなる研究結果が発表されました。ジョージア州立大学生物医学研究所の研究によって6種類のインフルエンザから保護できるワクチンが開発されたのです。
研究の詳細は「ADVANCED HEALTHCARE MATERIALS」に掲載されました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adhm.201901176?af=R
二重層ナノ粒子ワクチン
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インフルエンザウィルスにはHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)の突起状のタンパク質があります。インフルエンザワクチンはこれらの突起に対する免疫力を付けさせ、感染を抑えることができます。
NAへの免疫に比べてHAへの免疫は大きな効果を発揮するので、従来のワクチンではHAが重視されていました。しかし、HAタンパク質は急速に変異する特性があり、毎年形が変わります。せっかくワクチンを打って免疫を得ても、次のシーズンまで保護が続かないのです。
もし、すべてのインフルエンザウィルスに共通しており、尚且つ変異しない成分への抗体をつくれるなら、どんなインフルエンザにもかかることはなくなるでしょう。
この目標を達成するために、科学者たちはM2e(インフルエンザマトリックスタンパク質2エクトドメイン)とNAの2重層ナノワクチンを開発しました。
M2eはインフルエンザウィルスの基本構造の一部であり、すべてのインフルエンザ株に共通しています。加えて、時間経過とともに非常にゆっくりと変異する特徴もあります。
NAタンパク質はインフルエンザウィルスの表面に見られ、他のインフルエンザタンパク質に比べて非常にゆっくりと変異します。
核にM2eを使用し、表面をNAでコーティングしたものが新しいワクチンです。2つの組み合わせにより、インフルエンザウィルスに共通する基本構造への免疫を作りつつ、普遍的な保護を提供できるとされているのです。