- アマゾンの熱帯雨林で、クモに寄生し操る新種の寄生バチが発見される
- 新種の寄生バチは、蛹を他の捕食者から保護させるような特殊な糸を宿主のクモに出させる
寄生バチは地球上で最も種類の豊富な寄生虫ですが、アマゾンなどの熱帯雨林に生息するものについては情報が不足しています。
そこで今回、フィンランド・トゥルク大学の研究チームが、アマゾンおよびアンデス山脈の熱帯雨林を中心に寄生バチの調査を行ったところ、新種の寄生バチ15種類の発見に成功しました。
その中には、極めて珍しい方法で宿主を操るハチも見つかっています。調査は、ブラジル・INPA(国立アマゾン研究所)の協力のもと行われています。
研究の詳細は、1月9日付けで「Zootaxa」に掲載されました。
https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.4719.1.1
宿主を洗脳し、蛹を守らせる?
発見された寄生バチは、Acrotaphus属と呼ばれるヒメバチ科の寄生グループに属しています。Acrotaphus属は、寄生中の割には体が大きくて細長く、成長すると数センチにまで達します。
これまで、Acrotaphus属はわずか11種しか知られていないため、今回の発見は、熱帯雨林に生息するAcrotaphusとして有益な情報源です。
新種のAcrotaphus属は、クモを宿主とします。巣に留まっているクモをメスの寄生バチが襲撃し、長い毒針を使って一時的に麻痺状態にさせます。その隙に、クモの体表に卵をひとつ産みつけるのです。
その後、孵化した幼虫はクモの体を食べながら徐々に大きくなり、やがては蛹になります。この段階では、まだ宿主を殺しません。ここから寄生バチの操作は複雑になっていきます。
寄生バチがクモの体を離れて蛹になると、宿主のクモは死を迎えるまで、獲物を捉えるための糸が出せなくなります。その代わり、クモは寄生バチの蛹を他の捕食者から守るような特殊な糸を出し始めるのです。
研究チームのIlari E. Sääksjärvi氏は「これほど複雑な方法で宿主を操る寄生虫は自然界でも珍しい」と話します。その詳しいメカニズムは、現在も調査中とのことです。
寄生生物の世界は、本当に奇妙で興味深いですね。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/16334