- 月面に堆積している砂(レゴリス)には、酸化物という形で40%近い酸素が含まれている
- これを分解して酸素を取り出す技術が研究されており、将来は月で酸素を作り貯蔵することが可能になる
- 酸素を取り除いて残された合金は、3Dプリンタの原料に利用できる可能性がある
月面は何もない不毛の地…のように見えますが、月の表面に堆積した砂「レゴリス」には、人間にとって有用な成分が含まれていたようです。
持ち帰られたレゴリスのサンプルから、重量に対して40〜45%の酸素が含まれていることが確認されました。
欧州宇宙機関(ESA)の研究者たちは、レゴリスから酸素を取り出し、月面で生命維持と燃料に必須の酸素を得るための技術研究を進めています。
この技術が実現されれば、月面の活動でまず最初に人類が直面する、空気がないという問題が解決されるかもしれません。
この研究論文は、英国グラスゴー大学の研究者Bethany A. Lomax氏を筆頭とした研究チームにより発表され、惑星科学の科学雑誌『Planetary and Space Science』に掲載されています。
https://doi.org/10.1016/j.pss.2019.104748
月の砂 レゴリス
本物の月の砂は貴重なため、実験で使用されたのは成分分析から模造されたレゴリスです。
レゴリスに含まれる酸素は、金属やガラスなど砂の成分と結びついて酸化物の状態となっています。
これを完全に溶かして酸素を取り出すとなると、1600℃という極端な高温まで加熱する必要があります。
そこで今回の研究で採用されたのが、溶融塩電解と呼ばれる方法です。
溶融塩電解とは、水の代わりに溶融させた電解質を使って電気分解を行う方法です。
電解質を溶かして電気を流すと、水溶液よりずっと強い電気力(クーロン力)が発生します。レゴリスに電解質の塩化カルシウムを混ぜて950℃まで加熱し、電気を流すとレゴリス中の酸素は分解されて電極へ吸い寄せられ抽出することができるのです。
この方法は、そもそもはアルミニウムなどの金属の精錬に使われている民間の工業技術でした。そのため、本来の目的は金属を取り出すことで、発生する酸素は邪魔な副産物なので二酸化炭素などに変えて捨てられていました。
今回の研究者たちは、この技術に注目して逆に酸素をメインに取り出す技術として再設計したのです。
これにより、レゴリスのレプリカに含まれる96%の酸素を抽出することができました。