「手指」を持った最初の生物?
研究チームは、採取した化石をCTスキャンにかけ、デジタル上でE.watsoniの全体像を再構築しました。それにより、拡大・縮小を含む詳細な分析が可能になっています。
その結果、胸ビレ部分に、現生の脊椎動物に見られる手指や腕骨の原始形が確認されたのです。そこには、のちの四肢動物につながる上腕骨や前腕骨、手首なども含まれていました。
また、指の細かな関節も確認でき、はっきりと現生人類の手骨と対応しています。
一方で、クルティア氏は「指はあっても、E.watsoniが陸上を歩くことはなかったでしょう」と話します。
化石に見られる指骨や腕骨は小さすぎて、柔軟ではあったものの、陸上で自らの体重を支えることは不可能です。
それでも、「水中の浅瀬地帯で手をつくことはあったかもしれません」と同氏は述べています。
そのため魚類の上陸はもう少し後の、「イクチオステガ」などの原始的な四肢動物に譲られます。
しかし、E.watsoniは魚類と四肢動物への移行段階にある生物として、特筆すべき生物なのは間違いありません。
もし彼らの進化がなければ、四肢動物、ひいては人類が指や腕を持つことはなかったかもしれないのです。