かつて本州にいた巨大ヒグマ
ヒグマはクマの中では最大の体長を誇る大型動物で、日本に生息する陸生哺乳類の中では最大の種です。
しかし、このヒグマは日本では北海道にしかいないことでも有名です。
現在本州に生息する陸生大型動物は、ニホンジカ、ニホンカモシカ、ツキノワグマの3種類しかいません。
ヒグマについてはその獰猛さがよく話題になっていて、ネットでもヒグマの起こした恐ろしい事件として、三毛別羆事件や福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件が有名です。
そのため、本州にはヒグマがいなくてよかった、なんて思っている人も多いかもしれませんが、かつての日本の本州には、現在の北海道のヒグマよりはるかに大きなヒグマが住んでいたことがわかっています。
東京の近くにもこのヒグマはいたようで、本州のいくつかの場所で34万年前から2万年前の化石がいくつか見つかっています。
ただ、いずれも不完全な標本で、発見されている化石の数は10個未満です。
そのため、この古代日本のヒグマについてはわかっていないことも多いのです。
更新世(約1万2000年以前)の本州には、ヒグマ、バイソン、オーロックス、オオツノジカ、ヘラジカ、トラ、ナウマンゾウなど、かなり多様な大型哺乳類が生息していたことがわかっています。
こうした動物たちがどうやって、いつごろ日本に来たのか? 大陸に住む仲間との遺伝的な関係はどうなっているのか、なぜ本州では絶滅したのか? といった疑問を知ることは現在の日本列島の動物たちの成り立ちを理解する上で重要な研究です。
とくにヒグマのような大型の肉食獣は、過去の日本の生態系を知るためにも重要な存在です。
しかし、現在、ヒグマは北海道にしかいません。
これについては津軽海峡が非常に深いため(水深130m前後)、寒冷期でも陸路でつながることがなかったから、北海道と本州の動物相は大きく異なっている、と聞いたことがあるかもしれません。
こうした津軽海峡を挟んだ、日本の動物の分布境界はブラキストン線と呼ばれています。
では、なぜ大昔の本州にヒグマがいたのでしょうか?