- 約3億8000万年前の魚類の化石に、「手指」の痕跡が発見される
- 当時は、まだ生物が上陸する前のことで、この魚は、地球で最初に手指を持った生物かもしれない
カナダ・ケベック大学は、18日、約3億8000万年前に生きた太古の魚類「Elpistostege watsoni」の化石を発見したと発表しました。
この魚(以下、E.watsoni)は魚類が上陸して、四肢動物に進化する移行段階にある生物として知られます。
しかし驚くべきは、今回発見されたE.watsoniの化石に「手指」の痕跡が確認されたことです。
研究主任のリチャード・クルティア氏は「魚類の化石中に手指が見つかったのは初めてであり、魚が上陸以前に、すでに指を持ち始めていたことを示唆している」と話します。
研究の詳細は、3月18日付けで「Nature」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2100-8
「E.watsoni」が生きた時代
化石は、カナダ・ケベックにあるミグアシャ国立公園で発見されました。
敷地内には、「エスクミナック層」と呼ばれるデボン紀(約4億1600万〜3億5920万年前)の地層があり、E.watsoniの化石もそこで見つかっています。
E.watsoniは、デボン紀に生きた魚類で、体長は約1.6メートルです。当時の地球は、恐竜が出現する1億5000万年前にあたり、生物界は大型の魚類が支配的でした。
E.watsoniは、かつて存在したユーラメリカ大陸(今日の北アメリカとヨーロッパの一部に分裂)の南岸に沿った河口に生息しました。当時、ユーラメリカ大陸は、赤道直下にあったため、温暖で快適な環境に浴していたようです。
同時代の陸上では、小さな植物の他に、高さ10メートルほどのシダ植物が繁殖していました。しかし、地上に脊椎動物は存在せず、代わりにいたのはサソリやヤスデのような無脊椎動物でした。
唯一の脊椎動物である魚類は、その時まだ水中にいたのです。