- 個々のニューロンの神経活動パターンを解析して人体動作の「基本コード」を解明
- ヘッドギアで基本コードを読み取ることができれば仮想空間で自由に動ける
- フルダイブ型の仮想世界は終末医療に光をもたらす
一つ一つのニューロンの神経活動を測定する、革新的なブレインマッピングが行われました。
これまでの神経科学では、動作や思考が行われる脳の領域を調べるには、MRIによる脳内の血流量や脳波を測定するのが主流でした。
そのため、個々の脳細胞の働きまで調べることはできず「どのような神経活動パターン(コード)が人間の手首を動かし、足首を伸ばすのか?」といった根本的な疑問には一切答えられませんでした。
ですが今回、アメリカの研究者たちは被験者となった人間の脳に直接、電極を差し込む実験を敢行し、単一細胞レベルの神経活動データの取得に成功。
また、得られたデータを分析した結果、様々な体の動きを定義する「基本コード」ともいうべき神経活動パターンたちの存在も発見されています。
研究が進めば、この基本コードをヘッドギアなどを使って安全に検出することで、フルダイブ型の仮想現実世界で自由に動けるようになるかもしれません。
また自動車や船、戦闘機や戦車といった乗り物や二足歩行の人型のロボットを、操縦桿なしに制御することが可能となるでしょう。
研究内容はスタンフォード大学のフランシス・ウィレット氏らによってまとめられ、3月26日に生物科学分野の中で最も権威ある学術雑誌「Cell」に掲載されました。
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30220-8
個々のニューロンレベルの詳細な神経活動を調査する
今回の実験において最も重要だったのは、脳内に電極を差し込む「生きた人間の被験者」の確保です。
電極挿入が可能な被験者の確保は非常に難事ですが、今回、研究チームは四肢を含む全身麻痺を患う2人を被験者として迎え入れることができました。
まず、彼らの脳の「ハンドノブ(中心前回)」(下画像の赤い部分)領域に、96チャンネルを供えた電極が埋め込まれました。
電極が脳になじむと、研究者は被験者に顔、頭、脚、腕を動かすように指示し(実際には麻痺のため動かないが、それでも動かす努力をするように命令)、それぞれの場所ごとに電極が記録したニューロンの活動電位を測定しました。