太陽は私たちにとってもっとも身近な恒星ですが、その外層構造がどうなっているか? という問題についてはまだわからないことがたくさんあります。
特に表面近くのコロナ(太陽の大気)の状態は、今まで見ることが出来ない領域でした。
今回公開されたこれまでで最高解像度の太陽画像は、これまで単なる黒い領域でしかなかった黒点の様子を明らかにしています。
そこではプラズマ(荷電粒子)が、強力な太陽の磁場によって細い糸のようになっています。
細いと言ってもこの糸一本の幅は500キロメートルもあります。これは東京-京都間(直線で368キロメートル)の約1.3倍です。そして温度は100万度を超える高熱だと言います。
さすが太陽、というべきダイナミックな状況です。
この研究は、イギリスのセントラル・ランカシャー大学(UCLan)とNASAのマーシャル宇宙飛行センター(MSFC)の共同研究チームより発表され、論文は4月7日付けで天文学の査読付き学術雑誌『The Astrophysical Journal』に掲載されています。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab6dcf
太陽表面で吹き荒れるプラズマの糸
今回公開された画像の元データは、2018年にNASAの高解像度コロナイメージャー(Hi-C)によって撮影されたものです。
この宇宙望遠鏡は、太陽のコロナを高解像度で撮影するために設計されたもので、太陽表面を70kmのサイズまで判別して撮影することが可能です。
このサイズは太陽の大きさの0.01%まで見ることができることを意味しています。
このHi-C望遠鏡から提供されたデータを使い、超高精細な画像は、今まで暗い領域にしか見えなかった黒点の様子を映し出しています。
それは太陽のプラズマ(高熱で原子と電子がばらばらになった荷電粒子)が強力な磁場に沿って細い糸のように暴れまわっている様子でした。
研究者はこれを、低画質の映像で見れば、サッカーのピッチがただの均一な緑に見えるものが、ウルトラHD画質で見ると、草の一本一本まで飛び出して見えるようなものだと語っています。
太陽外層を構成している磁場とコロナループは、太陽嵐を発生させるメカニズムの重要な要素です。これは最終的に私たちの地球上へも多大な影響を与える活動です。
この部分の状態を詳しく観察し、太陽嵐がどの様に発生するのかを正しく理解できれば、地球の電子機器へもダメージを与える巨大太陽嵐に対してもより効果的な対策を計画できるようになります。
それを成し遂げるための第一歩がこの高解像度画像です。この意味を理解するためには、この画像を解析しさらなる研究を進める必要があると言います。
今まで見れなかったものが見えるというのは、ワクワクするものですね。これを見たかった天文学者も過去に大勢いたことでしょう。これからも、未知だったものが色々映像で見えるようになるかもしれません。