- 太陽の中心を出発した光子は、太陽の表面に到着するまでに17万年かかる
- 光子が遅延する原因は太陽内の陽子であり、衝突する度に進行方向が変化するから
光が太陽の表面から地球に降り注ぐまで8分しか掛かりません。
では、太陽の中心から太陽の表面(光球)に光が届く時間はどれくらいでしょうか?
数秒もしくは数分程度でしょうか?
答えは「17万年」です。
TED-Ed Animationsのアニメーターたちは、地球に届くまでにとんでもない時間がかかる理由をアニメーションで解説しています。
彼らのアニメーションは、「TED-Ed」で見ることができます。
Sunlight is way older than you think – Sten Odenwald
https://ed.ted.com/lessons/sunlight-is-way-older-than-you-think-sten-odenwald#review
太陽の中心から出発した光子が、地球まで17万年かかる理由
太陽の中心では、核融合により光子が作られます。
光子は発生したあと、秒速30万キロという速度で移動します。
しかし、太陽の内部にはたくさんの陽子があるので、何度も衝突してしまいます。
その度に進行方向が変わってしまうので、真っすぐ移動できません。
「光子が衝突しながらランダムに移動する」ので、外にたどり着くまでび時間は予想しづらいと思われるでしょう。
しかし、進んだ距離の算出方法は「ランダムウォーク問題」として知られており、「距離=歩幅×歩数の平方根」の公式で算出できます。
もし1秒に1メートルの歩幅で、このようにジグザグに歩くとしたら、11日かけて百万歩歩いても、その進んだ距離はたったの1キロと言うことになります。
距離が把握できるので、応用して外にたどり着くまでの時間も分かります。
では、太陽の中心で発生した光子が地球に届くまではどれくらいでしょうか?
太陽の質量などを元に、公式に当てはめて計算すると、移動時間は4千億年になります。
しかし、太陽はまだ46億才なので、この計算結果は大きく間違っていることになります。
この計算を正すためには、考慮すべき2つの点があります。
1つ目は、「太陽の密度が実は均一ではない」という点です。
太陽には高温の核があり、核融合が起こっています。核の周りには放射層があり、その表面は対流層でさらに覆われています。
このような構造の違いにより、内側から外側に向けて密度が徐々に低くなります。実際、その密度差は数百分の1になもなるようです。
当然、光子の進行具合にも大きな影響を与えます。
2つ目の考慮すべき点は、「陽子の多くは実際に光子と衝突しない」ということです。
太陽の核で生まれた光子は最初、とてつもなく大きなエネルギーを持っていますが、光球に近づくにつれて、そのエネルギーはどんどん小さくなっていきます。
高エネルギーの光子にとって、陽子は障害物とはなりませんが、低エネルギーの光子にとって陽子は大きく、弾き飛ばされやすくなります。
つまり、エネルギーの観点でみると、光子は中心から最速で出発し、外に近づくにつれて徐々に遅くなっていくのです。
さて、コンピューターや最新の太陽内部データを使い、これら2つの変数を考慮に入れて、先ほどの式で計算すると、どうなるでしょうか?
冒頭で述べた、光子が太陽から放出されるまでに「17万年かかる」という結果が出るのです。
もちろん、今後の調査でさらに正確な数字が提出される可能性はあります。
現時点での研究で言えることは、太陽の光が地球に届くまで、まず太陽の中心から表面まで17万年を要し、そこからほんの8分の宇宙の旅をしてくるということです。
つまり、地球にある光子が核から出発したのは、第4氷河期ごろ、人類が衣服をまとい始めた時代なのです。
そんな昔の光子を今浴びているなんて、何とも不思議な気持ちになりますね。