シュバルツシルト歳差運動
歳差運動とは、軸がズレて回転する運動を指しています。
失速してきたコマは、軸が傾いた状態でぐらぐらと回転しますが、ああいう状態が歳差運動です。
公転する天体の歳差運動は、実は一般相対性理論よりずっと前の理論、ニュートン力学でも予想されていました。
太陽系の惑星が太陽にもっとも近づくポイントを近日点といいますが、ニュートン力学では水星の近日点が徐々にズレて公転軌道が歳差運動していることを予想していました。
これを水星近日点移動といいます。
これは古い時代でも観測で確認されているものでしたが、観測結果とニュートン力学により計算された軌道には誤差がありました。
大まかとは言え、こうした運動を予想できたニュートン力学がすごすぎると言えますが、ニュートン力学では重力が強く、天体の運動速度が光速に近づいた状況ではうまく機能しなくなります。
これを高い精度で観測と一致させたのが、アインシュタインの一般相対性理論です。
そして今回の観測から、ブラックホール周辺という極端な環境でも、一般相対性理論の予想は恒星の軌道とピタリと一致したのです。
すごいぞ一般相対性理論、そしてそれを確認するために1つの天体を27年も追い続けた観測チームすごいぞ、というのが今回のお話です。
この研究はマックス・プランク地球外物理学研究所の研究者Frank Eisenhauer氏が率いる国際チームにより発表され、論文は観測に基づいた天文学の査読付き学術雑誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に4月16日付けで掲載されています。
https://doi.org/10.1051/0004-6361/202037813