音の屈折
屈折という現象は、波がある媒体から別の媒体へ移動するとき、波の速度や波長が変化することによって進行方向の角度が曲がることです。
光は水の中に入ると曲がりますが、これは空気中と水中では進む速度が変わるためです。密度の高い場所では、光は分子中の電子と相互作用して速度が落ちてしまうのです。
音の屈折は、あまり聞いたことの現象ですが、風の影響で速度が変わるとき音波もこの屈折を起こします。
風について考えてみましょう。
一般的に地表付近では樹木や建物、また地形の起伏など阻害する要因が多いため、低高度では風の速度が遅くなり、逆に高高度では風速は早くなっていきます。
風と同じ方向に向かって進行する音は、このとき地表に向かって屈折を起こすことになるのです。
音波の上半分より下半分の方が遅くなると、アコーディオンの蛇腹のように、上半分の波は距離が開いて、下半分の波は縮んでいる状態になります。すると波は縮んだほうへ曲がっていってしまいます。
こうした理由で、音波も上空から地表へ曲がっていくわけです。
一方、音が風に逆らって進んでいた場合、音速は先ほどと逆の関係で減速していきます。
つまり風速の速い上空ほど音は遅く進み、風速の遅い地上付近では音は速く進むのです。
すると、先程とは逆に、風に逆らって進む音は地表を離れて上空に向かって屈折してしまうのです。
このように風速の違いによって音に屈折が生じるため、風下の音源は音が聞き取りにくくなり、風上からのほうが聞き取りやすくなるのです。