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100年以上謎だった「全身麻酔で意識がなくなる原因」が特定される (2/2)

2020.06.01 Monday

前ページ175年に渡る医学界のミステリー

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原因は脂質の無秩序化

問題を解く鍵の1つは、非常に小さい世界を見る新しい顕微鏡技術の登場です。

ノーベル賞も受賞した最新の顕微鏡技術を使った「STORM顕微鏡(確率的光学再構築顕微鏡)」は、普通なら見ることのできない光の波長より小さい分子などを観察できる超解像度顕微鏡です。

また、脂質の複雑な組織や機能についても、最近は多くの知見が集まっていて、研究を進めやすい状況になっていました。

今回の研究チームは、こうした技術と知見を用いて、細胞をクロロホルムに浸して観察を行いました。

するとGM1と呼ばれる細胞膜脂質クラスターが大きく広がったのです。

これは細胞内の秩序だった脂質ラフトが無秩序に変わっていくものでした。

画像
Credit: Hansen lab, Scripps Research

この組織の変化を注目して見ていったところ、無秩序になるにつれてGM1は、内容物の酵素PLDを周りに放ちはじめました。

これは、まるでビリヤードの玉のように別の脂質クラスターへと弾かれていき、ニューロンの発火能力を抑える働きのあるクラスターを活性化させたということです。

研究チームは、この細胞の変化を生きた動物の中で確認するため、ショウジョウバエを使って実験を行うことにしました。

研究チームが試したのは、この脂質から出される酵素PLDの削除でした。すると、ショウジョウバエは麻酔の鎮静効果に耐性を得るようになったのです。

酵素PLDを削除したショウジョウバエは、通常通り効果を出すためには、麻酔薬が2倍必要になったのです。

これは麻酔薬が脂質を無秩序化し、PLDという酵素を放つことでニューロンの発火を阻害するという流れで、人が意識を失う原因を示したものです。

しかし、PLDを削除してもすべてのハエは最終的に意識を失ったため、すべての原因とは言い切れないようです。

経路の1つであるのは確かだが、唯一の経路ではないだろう、と研究チームは述べています。

ちょっとした細胞内の無秩序化が、途端に私たちの意識を奪ってしまうとは…。

この研究は睡眠や意識の障害にも関連するもので、それは脳の高次機能がどのように進化して制御されているのか、私たちの意識が何なのかを明らかにする基礎的な研究でもあります。

この研究は、米国スクリプス研究所化学者のリチャード・ラーナー医学博士と 分子生物学者のスコット・ハンセン博士を含む研究チームより発表され、論文は『米国科学アカデミー紀要:PNAS』に5月28日付で掲載されています。

Studies on the mechanism of general anesthesia
https://doi.org/10.1073/pnas.2004259117

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【編集注 2020.6.2 8:55】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。
reference: medicalxpress/ written by KAIN

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