どうして皮膚が青色になるの?
銀皮症は名前にもある通り、「銀」によって引き起こされる体の色素増強作用のことを指します。
銀皮症において最も際立つ症状は、皮膚が青色もしくは青みがかった灰色に変色することです。
この変色は局所的に起こる場合もあれば、全身に広がる場合もあり、また皮膚だけでなく、眼球が青色に変わることもあります。
銀皮症は最近知られた病気ではなく、歴史的に見ると19世紀にはすでに広く認知されていました。
特に当時は「銀で体の色が変わる」という認識もなかったため、銀の製造工場で働く労働者たちが大量の銀もしくは銀の化合物にさらされ、それを吸入することがよくありました。
そして数カ月〜数年の長期間にわたって銀を吸入した人々に銀皮症の症状が見られたのです。
加えて、当時は銀を病気の治療に使用することも普通でした。
微細な銀粒子を液体に混ぜた「コロイド状銀」がさまざまな病気を治療するための内服薬として用いられていたのです(抗菌作用などから現代でも使用されますが、医療の現場では慎重に利用されています)。
そうした医学的知識不足の背景からか、銀皮症は現代よりも19世紀から20世紀にかけてよく見られました。
ただ1940年代には、コロイド状銀の服用による銀皮症の危険性が認知されて世界的な使用が減少し、現在ではむしろ銀皮症は稀な症例となっています。
では、銀を大量に摂取するとどうして皮膚が青色になるのでしょうか?
まずもって、体内に混入した銀は長い時間をかけて徐々に皮膚の表面へと蓄積されていきます。
銀の感光性が写真撮影に利用されているように、皮膚に蓄積された銀の粒子は日光にさらされることで特定の光の波長を反射する働きをします。
これが青色や青みがかった灰色なのです。
こうした皮膚の変色は永続的なものであり、時間の経過とともに色が薄くなることは原則としてありません。
皮膚の真皮層は新陳代謝が非常に遅いため、一度沈着した銀を自然に排出することはほぼ不可能なのです。
青色の濃さが銀の摂取量や蓄積した期間によって大なり小なり異なることはありますが、銀皮症の患者は「青色の肌」が普通の状態となってしまうため、心理的な苦痛を経験することがあります。
銀皮症への有効な治療法も今のところほぼ存在しておらず、唯一、レーザー治療によって皮膚の色を改善することが可能ですが、それでも完全な治癒は期待できません。
ただ不幸中の幸いというべきか、銀皮症が直ちに命に関わることはないとされています。
銀の摂取量によって腹痛や頭痛、腎障害などが起きるケースもありますが、銀は人体において毒性が低いため、直接的に生命を脅かすような症状を起こさないのです(一度に大量の銀を摂取した場合は除く)。
では最後に、銀皮症を発症した患者として最も有名な男性を見てみましょう。