なぜ緑が濃くなると、火山噴火が近いのか?
火山噴火は地球上のありとあらゆる自然災害の中で、最も危険なものの一つです。
もし火山が噴火すれば、何千何万という人命が失われる可能性があり、また粉塵が上空を覆って気候変動を起こす恐れもあります。
そのために、火山の噴火を正確に予測する技術がとても大切です。

これまで火山の噴火予測といえば、地震活動や地盤の隆起、火山ガス(二酸化硫黄)の観測などが知られています。
しかし近年の研究で特に注目を集めているのが「二酸化炭素(CO₂)」です。
火山のマグマが地下で上昇するとき、CO₂が最初に地表近くへと漏れ出します。
このCO₂は無色・無臭で、しかも大気中にもともと多く存在しているため、直接捉えるのが難しいとされてきました。
ところがNASAの研究チームは、火山周辺の「木々の葉の色」を通じてCO₂の存在を宇宙から間接的に捉えるという画期的な方法を探り始めました。
その理由は明快です。
植物は光合成にCO₂を必要とし、大気中のCO₂濃度が高まると、葉がより青々と繁茂する傾向があります。
つまり「火山からCO₂が出始める → 周辺の植物が活性化する → 森が濃い緑色になる」という自然の“つながり”を利用しようというのです。
これまでは、こうした変化を観測するには現地に足を運ばなければなりませんでした。
しかしNASAのLandsat 8やESA(欧州宇宙機関)のSentinel-2といった地球観測衛星が高解像度で植生の状態をとらえることで、遠隔地からの常時モニタリングが可能になってきています。
火山周辺に広がる森林が「緑濃く」なったとき、それは単なる季節の変化ではなく、「地下でマグマが動き出している」兆候かもしれないのです。
そしてチームは、両者の関連性を実際に観測することにも成功しました。