金採掘で何が起こっていたのか?
研究チームは今回、南米ペルーのマードレ・デ・ディオス地域の熱帯雨林にある2カ所の放棄された金採掘跡地を調査しました。
採掘が行われたのは小規模な現場で、いずれでも通常の採掘方法とは異なる「サクション・マイニング(suction mining)」という方式が行われています。
サクション・マイニングとは、高圧の水砲で地面を洗い流し、金粒子を含む土砂を水で流しながら選別する手法です。
水と混ざった土砂が泥水のような状態になり、傾斜のある水路(スルース)に流されます。
この水路では、比重の重い金粒が沈殿し、軽い土や有機物(栄養豊富な表土など)はそのまま流れ去ってしまいます。
そして金だけを選別したあとは、大量の砂の山・砂利・石くれや、人工的にできた水たまり(停滞池)が現場に残されるのです。
(重機を使った通常の掘削式の採掘方法であれば、地面を物理的に掘り返して金を探すので、表土の一部を回収・再利用でき、土壌損傷が少ない場合があります)

チームはドローンと土壌センサー、電気抵抗トモグラフィーと呼ばれる最新の技術を駆使し、土地の温度・水分・地中構造を調査しました。
すると、砂の山の表面温度はなんと摂氏60度に達し、周囲の森林に覆われた土壌に比べて最大100倍もの速度で水分が排出されることが判明したのです。
土壌の深さ1.5~2メートルにわたり乾燥した層が広がっており、雨が降ってもすぐに蒸発。地中に水がとどまらず、植物の根が水を吸収できない状態になっていました。
チームを率いたウッドウェル気候研究センターのアブラ・アトウッド博士は「苗木を植えても、まるでオーブンの中で木を育てるようなものです」と語っています。