- オーストラリアに生息する巨大トカゲは絶滅危機にある
- トカゲ精子の凍結・解凍は種の保護に繋がる
- 解凍後の精子にカフェインを加えることで、精子が活性化。動きまわる元気な精子を回収できる
絶滅危惧種の精子を保存することは、種の保護に繋がります。
しかし、凍結保存した精子が解凍後にも元気だとは限りません。
この点、オーストラリア・マッコーリー大学の生物科学者であるサイモン・クラウロー氏ら研究チームは、トカゲの精子を凍結・蘇生させる新しい技術を開発しました。
彼らは精子にカフェインを与えることで、解凍後の活性化に成功したのです。
トカゲの精子を凍結して絶滅回避
近年、アーガスモニター(Varanus panoptes)と呼ばれる巨大トカゲは絶滅の危機に瀕しています。
その原因は、捕食者であるオオヒキガエル(Rhinella marina)の増加にあります。
彼らがトカゲたちの生息地に移動してきたため、生態系全体が甚大な影響を受け、アーガスモニターの個体数は97%も減少してしまいました。
そのため研究者たちは、精子の凍結保存によってトカゲたちを守ることにしたのです。
トカゲの精子は液体窒素(約-196℃)に浸すことで凍結保存され、その後、35℃のぬるま湯で解凍されました。
この凍結保存の際に役立つのが「凍結保護剤」です。
凍結保護剤にはいくつか種類がありますが、実験の結果、一般的な凍結保護剤であるジメチルスルホキシド(DMSO)が有効だと判明。
DMSOは細胞の脱水を促進させ、氷の結晶が細胞内に形成されるのを防ぎます。これにより精子は凍結中に氷の結晶で引き裂かれることがありません。
これらの成果は非常に有望なスタートとなりました。しかし、ある問題も生じました。DMSOは解凍後の精子の運動を大きく制限してしまうのです。
同様の方法で哺乳類や鳥類の精子サンプルを凍結・解凍したとしても、元気に泳いでいる精子を大量に回収できます。しかし、トカゲなどの爬虫類には通用しなかったのです。