- 巨大太陽フレアを発生位置まで含め高い精度で予想する物理モデルの開発に成功した
- 従来の方法は過去のデータから統計的に予想するもので精度は50%未満だった
- 新たな方法は太陽表面の不安定性に基づいており、過去の履歴に頼らず80%近い精度で位置まで予想する
巨大地震や洪水など、我々の日常生活を脅かす自然災害はこの地球上に数々存在していますが、現代の我々は宇宙からやってくる自然災害にも目を向けなければなりません。
巨大太陽フレアは、太陽表面で起きる巨大な爆発現象ですが、ここで発生する電磁波は離れた地球の電子機器に甚大な被害を及ぼします。
大規模な停電や通信障害、さらに家電の電子回路が破壊されて使い物にならなくなるなどの問題が広範囲に発生する可能性があるのです。
ちょっと想像してみるだけでも、現代社会が大混乱に陥るのは明白でしょう。
そのため、台風などに備えるのと同じように、太陽フレアに備えた宇宙天気予報についても研究が進められています。
ただ、この災害は遠い太陽表面で発生するもので、メカニズムも明確ではなく、正確な予測を行うことは地震予測と同じくらい困難でした。
しかし、日本の名古屋大学などの研究グループは、巨大太陽フレアを正確に予測するモデル開発に成功したとのこと。
それは実に80%近い精度で、太陽フレアを発生位置までふくめて予測できるというのです。
巨大太陽フレア
太陽フレアは太陽表面で磁場によって蓄積されていた膨大なエネルギーが爆発を伴って開放される現象です。
これが発生すると、電波波長からガンマ線波長に至るまでさまざまな電磁放射が急激に増加します。
同時に大量の高エネルギー粒子(宇宙放射線)や磁場を伴った巨大なプラズマ(荷電粒子)も宇宙空間に放出され、場合によっては地球へ降り注ぐのです。
これは宇宙で活動する宇宙飛行士を被爆させ、軌道上の人工衛星を損傷させ、地上ではGPS機能が利用できなくなったり、停電、通信障害など社会生活の基盤を破壊する災害を広範囲に起こします。
こういったものは宇宙天気現象と呼ばれています。
1989年に起きた太陽フレアによる磁気嵐では、カナダのケベック州一帯が停電するという被害が起こっています。
記録上もっとも大きな被害を地球に及ぼした太陽フレアは、「1859年の太陽嵐」または「キャリントン・イベント」と呼ばれるもので、このとき世界中の空でオーロラが観測され、アメリカでは普及途中だった電信用の鉄塔が火花を上げて、電報用紙が燃えるなど火災まで発生したと伝えられています。
同規模の太陽フレアは、実は2003年と2012年にも観測されていますが、このときは運良く磁気嵐(フレアで発生したプラズマや放射線)は地球を直撃せず、地上に大きな被害はありませんでした。
しかし、そんなラッキーがいつまでも続くとは限りません。
宇宙天気現象の被害を最小限に食い止めるためには、太陽フレアの発生を事前に予測する精度の高い宇宙天気予報が必要になるのです。
しかし、太陽フレアの発生メカニズムは十分に解明されておらず、これまでの予測は過去の黒点のデータなどを参考に経験的に予測するしかありませんでした。