「人間 vs AI」 1回戦から5回戦の結果
次はいよいよ、人間とAIの戦いです。
戦いは様々な条件において行われ、先に5勝したほうが勝ちとなります。
人間側はF16に2000時間以上の搭乗経験を持つ米空軍の精鋭パイロットが、身元を隠して「バンガー(Banger)」の名で参戦しました。
相手はもちろんヘロン・システムズのAIです。
対戦はバルカン砲(M61)のみを武器として使い、先に相手のHP(耐久値)を削った方が勝ちです。
格闘ゲームと同じく、HPが減ったことでのペナルティーはありません。
人間のバンガー氏はVRヘッドセットをつけて参加し、AIはシミュレーション世界の中で待ち受けます。
第1回戦(開始高度4880m)は動画の4時間40分13秒あたりからはじまりました。
しかしこの時点で既にAIは人間とは異なる挙動をみせています。
人間のパイロットが曲線的な動きをとる一方で、AIの操るF16はより鋭角な軌道を描きました。
結果、バンガーは一度もAIに攻撃を命中させられず、逆に撃ち落されてしまいました。
第2回戦(開始高度3700m)では人間側パイロットも果敢に攻めて行きます。
しかしAI側は常に人間側よりも高いGでの機動を行うだけでなく、人間側の動きを読むようにして正確にバルカン砲をあててきました。
結果、勝負は59秒で決着がつきます。人間はまたもや負けました。
第3回戦(開始高度2260m)も熾烈な旋回競争が行われました。
しかし今回は開始高度が2000メートルとかなり低く、空戦が進むにつれ双方の高度が急激に低下し、高度400メートルを切る場面もみられました。
人間のパイロットは墜落を防ぐために、低高度でさらに高度を失うような急激な戦闘機動を避けるように訓練されています。
しかし命を気にする必要のないAIは違いました。
AIはドッグファイトを行うには低すぎる高度でも非常に攻撃的な機動をみせ、人間の後部に食いつき、バルカン砲を発射したのです。
特に最後の場面では、後ろに回り込んだAIによる一方的な攻撃もみられます。
結果、勝負は僅か53秒で決着がつき、AIの圧勝となりました。
第4回戦(開始高度4250m)ではAIの動きがより攻撃的になり、戦いはより一方的な展開になりました。
結果、勝負は52秒で決着し、またもやAIの圧倒的な勝利で終わったとのこと。
しかし第5回戦は違いました。
これまで圧倒的な強さをみせつけてきたAIに対してバンガー氏はまともに戦うことを放棄して、降下しつつAI機との距離をとり、時間稼ぎをはじめました。
空戦においては相手にどうしても勝てない場合、そして逃げられない場合、早々に撃墜されてしまうことを避けるのが次善の策になります。
生存時間が長くなればながくなるほど、味方の増援が来る可能性が高くなるだけでなく、相手のミスも誘えます。
人間側の機体は少しでも距離をとるため急降下を繰り返しました。
そして高度の余裕がなくなると、円運動をはじめ、敵との距離を稼ぎ続けました。
実際、この戦法は有効にみえました。
逃げに徹する人間に対してAIは攻めあぐねてるようにもみえたからです。
しかし無数の学習をしてきたヘロンのAIは直ぐに判断を修正し、人間側の背後に回り込んでバンガーを撃墜しました。
最終的には負けてしまったものの、人間側の生存時間は最長の165秒を記録しました。