人間への挑戦権をかけた「AI vs AI 」 チャンピオンAIは何が特別だったか?
今回の試験には8つのAIが参加し、最初にAI同士で人間への挑戦権をかけた戦いが行われました。
空戦ルールは単純で、重力など現実世界の物理法則の元に、バルカン砲(M61)のみを用いたドッグファイトをするというものです。
ミサイルは使われず、使用する戦闘機も全て同じ性能のF16(ファルコン)に統一されています。
今回の試験は、あくまでドッグファイトの性能を追い求めているからです。
結果、チャンピオンに輝いたのは、メリーランドに拠点を置くヘロン・システムズでした。
ヘロン・システムズのAIも他のAIと同じく基本は深層強化学習によって力を身につけましたが、1つ大きな違いがあったのです。
他のAIは深層強化学習を行う前に、あからじめ事前にパッケージ化された、上昇・下降・旋回など、ごく基本的な構成要素が情報としてAIのメモリーバンクに組み込まれていました。
しかしヘロン・システムズのAIの育成にはこれら基本的要素を事前に含まず、完全にまっさらな状態からAIに学習を行わせたとのこと。
そのためヘロンのAIは最初は飛ぶこともままならない状態でしたが、学習を重ねるにつれ、プリセットの情報に囚われた他のAIを凌駕しました。
他のAIと最も顕著な違いが出たのは「判断力」です。
他のAIは1秒に50回に上る判断更新をする必要に迫られましたが、ヘロンのAIは1秒に10回程度しか自分の判断を更新しませんでした。
これは初期を含む各判断が他のAIよりも優れていることを示します。
このヘロンAIの滑らかさはAI vs AIの決勝戦で、今回使用した軍用機「F16」の製造元ロッキード・マーティンに挑んだとき、特に顕著でした。
ヘロンのAIは多くの場面で優位な位置をとり、ロッキード・マーティン(のAI)を倒すことができたのです。
チャンピオンに輝いたヘロン・システムズのAIは人間への挑戦権を獲得しました。