なぜ人間は機械に勝てないのか?
今回の人間とAIの戦いは人間の完敗という結果に終わりました。
対等の条件にありながら、人間はAIに対して一度も有利な地点を得ることができなかったのです。そのため(当然ながら)、弾を一発も当てられませんでした。
さらに衝撃的だったのは、空戦時間の短さです。
5つの戦いのうち、人間側が1分以上生存できたのは2つのみ、しかもそのうちの1つは勝つことを諦め、最初から逃げに徹したものでした。
なぜ人間はAIに勝てなかったのでしょうか?
第一に原因として考えられるのは、AIだけにみられた安全策の放棄でした。
戦いにおいて、AIは人間が忌避するような低高度でも躊躇なく攻撃的な機動をみせています。
一方、人間側は墜落を恐れて低高度での機動は控えめになり、結果として撃墜されてしまいました。
また人間のパイロットは空中衝突を避けるために敵機との間を150m以上あけるように教育されていましたが、安全策をとる必要のないAIは積極的に距離をつめて攻撃をしていました。
人間のパイロットには他にも、大きすぎるGが禁止されていたり、自分で発射した弾にあたらないように、大きな仰角で弾を発射してはならないなど数々の安全上の制限があります。
ですがこれら命を守るための安全策は全てAIに利用され、人間側の全敗につながったのです。
一方、安全策以外でも人間とAIの差は見られました。
AIは「OODAループ」(観察、方向付け、決定、行動)にかかる時間が「ナノ秒レベル」で調整できる一方で、人間はどんなに早くとも数秒程度はかかってしまうのです。
1ナノ秒は10億分の1秒であり、判断速度の差は圧倒的。事実、人間vs AIの戦闘時間は、多くのAI vs AIの戦闘よりも著しく短かい傾向がありました。
これは、AIの相手をするには、AIを投入するしかないことを示唆します。
またAIと人間では根本的に異なる点がもうひとつあります。
人間は失われると補充がききませんが、AIはプログラムを無限にコピーすることが可能であり、戦闘機を作ればつくるだけ即戦力になるという強みがあるのです。
そのため、もし兵器生産を自動化できれば、資源の続く限り戦力を強化することが可能となるでしょう。