最初のバーベキューの前に存在した天然の鍋
研究対象である初期人類の化石の宝庫、タンザニアのオルドバイ渓谷で採れた170万年前の地層成分から、興味深い脂質成分が検出されました。
分析の結果、この新たな脂質成分は植物や動物由来のものではなく、イエローストーン公園などでのみられる「Thermocrinis ruber」という種類の細菌のものだと判明します。
Thermocrinis ruberは80度以上の熱湯の中でのみ生活する超好熱菌として知られています。
この事実は170万年前、初期人類が生活していた環境のすぐ近くに、常に沸騰する「天然の鍋」があったことを意味するのです。
当時まだ火を使う術を知らなかった初期人類にとって、これほど調理に向いた環境はありません。
狩りによって捕えた動物や地下から掘り出したイモ類の根は、そのままでは寄生虫に汚染されていたり、硬くて食べるのが困難。しかし煮込むことさえできれば、寄生虫の問題も硬さの問題も解決できます。
そのため研究者たちは、初期人類の歯や腸が脆弱化した背景には、火の使用以前に天然の鍋の使用があったからだと考えました。