太陽系を高速で移動できるルート
研究は、金星から海王星までの主要な7つの惑星の影響のもと、3AU(天文単位:太陽から地球までの距離を基準にした距離)の小惑星帯から20AUの天王星軌道までの安定した軌道を計算しました。
シミュレーションでは、200万個以上の異なる初期値を与えられた物質を太陽系に放って、その軌道を見ています。
これはリアプノフ指数という軌道の離れていく度合いを計算したもので、明るいラインで示されている場所が安定して太陽系を移動していけるポイントを表しています。
しかし、これは素人には難しくてよく分からない結果なので、もう少し分かるように、シミュレーション結果のアニメーションを見ていきましょう。
太陽系では、最大の惑星である木星の影響が大きく、適切な初期値を与えなければ、物体は木星の重力に捕まって抜け出せなくなってしまいます。
下のアニメーションは、木星の重力に捕まってしまい、最終的に木星に衝突してしまった31個の粒子のパターンを示しています。
左上が経過年数を表していて、木星の重力に捕われてしまった物体は、何十年たってもそこから抜け出せないのがわかります。
最終的にここに写った31個のシミュレーション粒子は木星に落っこちてしまいました。
しかし、逆に木星重力をうまく使って、太陽系の外まで弾き飛ばされたパターンもありました。
下のアニメーションは、木星の重力によって太陽系から高速で脱出した小天体38個のシミュレーション結果を示したものです。
こうしたシミュレーションによって、もっとも早く太陽系を抜け出すルートを研究は発見したのです。
これを太陽系の宇宙ハイウェイだと表現しているのです。
研究が発見した宇宙ハイウェイのルートを通ると、10年未満で海王星軌道まで達することができ、100AUの距離移動を100年未満で移動できたそうです。
宇宙ハイウェイと聞いて、ワープ航路のようなものをイメージした人には、想像と違う結果だったかもしれません。ですが、この複雑な太陽系惑星の影響下で高速で移動できるルートの発見は、今後の探査機の派遣や、地球に危険を及ぼす彗星の発見などで活躍することになりそうです。