ゲームを使ったADHD診断の有用性
これがそのゲームの画面です。
内容は、昔のマリオのゲームにように、障害物や落とし穴を避けながらひたすら横方向へ進んでいくアクションゲーム。
アバターはタヌキスーツを着たマリオ…ではなく、なぜかアライグマだそうです。
ゲームは18ステージ用意されていて、合計で180個の落とし穴を飛び越える必要があります。ステージごとに落とし穴の間隔、落とし穴の幅、が異なっていきます。
アバターを速く移動させると次の落とし穴までの判断時間が短くなってしまいますが、ゆっくり移動していると幅の広い落とし穴は飛び越えられません。
研究チームは、ADHDの症状を持つ子どもたちは、不注意の結果としてより多くのミスをする可能性が高く、また不要なジャンプを落とし穴の近くで繰り返してしまうことで落下してしまうという仮説を立てました。
実験では、ADHDと診断された8歳から16歳までの32人の子どもたちに協力してもらい実施しています。
通常の診断では、保護者や教師、本人の申告を元にするため、医師の客観的な評価が下しにくい面がありますが、この研究の利点は、医師が直接患者の行動を観察し、不注意の重症度を客観的に評価できる点です。
また、この方法を用いれば症状の進行状態や治療の有効性を、医師が直接評価することもできます。
そしてこの初代マリオのような、単純な構造のゲームは、大掛かりな機器を必要とせず、標準的なスペックのパソコンやタブレットで動作させることができ、導入のコストをゼロにすることができます。
またゲームのプレイを観察するので、医師が遠隔から評価を行うことも可能になります。
なにより、子どもにとってはゲームは慣れ親しんでいるものなので、子どもがテストに適応しやすいというメリットもあります。
現在テストに約7分かかるそうですが、それもこのゲームで見られるADHDの特徴や評価に関する正確なデータが蓄積されれば、もっとずっと短い時間で完了できるようになるだろうと研究者は語っています。
時間のない臨床現場において、これは特に魅力的なことです。
ADHDの早期診断は、患者の予後にも重要になります。コストがかからず素早く客観的な評価を下しやすいこのゲーム診断は、かなり有望な方法になるかもしれません。