培養脳は培養臓器との接続によって「目覚め」を起こす
培養脳と体の接続は、非常に興味深い結果を残しました。
体との接続により培養脳は、まるで目覚めたかのように、恒常性遺伝子(生命に必要な基本遺伝子)の働きを増加させ、生きている人間と同じような糖やコレステロールの代謝経路を作動させました。
さらにセロトニン・ドーパミンなどの脳内物質やオキシトシンなどのホルモンを介したシグナル伝達を増加させたとのこと。免疫に関わるサイトカインなどの成分値も、生きているヒトの血液と近い数値に変化していきました。
これは、培養脳だけではみられなかった現象です。
この結果は、体との接続が、培養脳をより自然な人体の脳に近づける、ある種の「目覚め」の契機になったことを示します。
一方、パーキンソン病を発症させた培養脳も似たような変化(自然化)がみられたものの、短鎖脂肪酸に対する反応は正常な培養脳とは異なりました。
短鎖脂肪酸は腸内細菌の活動によって生成される物質として知られています。
正常な培養脳はこの腸から巡ってくる短鎖脂肪酸が健康維持に有用だったものの、パーキンソン病を発症させた培養脳では悪化の原因物質となり、タンパク質の異常な折りたたみと細胞死を引き起こしました。
この内容は、生きているマウスにおいて、腸内細菌の変化がパーキンソン病の悪化の原因であるとする、既存の研究結果と一致します。