ナマコのウンチはサンゴ礁の大切な肥料に
本研究では、グレートバリアリーフ南端に位置する、ヘロン島のサンゴ礁(約19平方キロ)を対象に調査されました。
ヘロン島の中心部には、外海から隔てられた浅い水深のラグーンがあります。
研究チームは、ドローンを用いてサンゴ礁の干潟の全エリアを空撮し、映り込んだナマコの数を計上しました。
映像分析では、300万匹以上が確認されています。
その後チームは、最も一般的な種のクロナマコ(Holothuria atra)で給餌実験を実施。
その結果、一匹のクロナマコは、1日約38グラム、年間で約14キロの排便をすることがわかりました。
これをヘロン島に分布するナマコに当てはめると、年間7万トンの排便量に達し、エッフェル塔5基分をわずかに上回る重量となります。
研究主任のヴィンセント・ラウルト氏は「ヘロン島の中心部にあるラグーンは対象外だったので、そこに生息するナマコも含むと、年間の排便量はさらに増える」と指摘します。
また、ナマコのウンチは、周囲の生態系、とくにサンゴ礁の健康にとって重要な肥料です。
ナマコは海底に落ちている藻類や小さな海洋生物を食し、消化の過程でこれらが分解され、一緒に飲み込んだ砂とともにウンチとして排泄します。
このウンチには、サンゴの形成に欠かせない炭酸カルシウムや、成長を促進させるアンモニアが豊富に含まれています。
さらに、ナマコのウンチは海水の酸性度を低める効果があり、サンゴが炭酸カルシウムを形成するのに有用です。
それから、ナマコはエサを探すために海底の堆積物をひっくり返し、そこに埋まっていた沈殿物(栄養素)を海中に解き放ちます。
もしナマコがいなければ、これらの栄養素は海底に埋もれたまま、生態系の役に立つことはありません。
しかし現在、ナマコの個体数は、海水汚染や乱獲により減少の一途をたどっています。
すでに7種が絶滅危機に瀕しており、ナマコがいなくなるとサンゴ礁もその煽りを受けるでしょう。
サンゴ礁は、海水のCO2濃度調節を請け負う上に、多くの生き物のすみかや産卵場所として「海のオアシス」とも称されます。
サンゴ礁を守るためにも、ナマコのウンチは必要不可欠なのです。