酸素の代わりに硫酸で呼吸する細菌
今回報告された新種の細菌は、主に硫酸イオン(SO42-)を使って呼吸を行い、硫化水素(H2S)を発生させる細菌です。
こうした性質を持つ細菌は、硫化還元細菌と呼ばれていて、海洋堆積物や熱水噴出孔、石油生産施設などさまざまな場所で発見されています。
今回見つかった細菌はデスルフォビブリオ属(Desulfovibrio )に分類されるグループで、現在までに50種以上が報告されています。
しかし、陸の地下環境から発見されることは非常に稀で、世界でも4例しか報告がありません。
今回の報告された細菌は、陸域地下環境で見つかった5例目の珍しいものであり、さらに日本国内では初めての報告となるため、非常に貴重な発見と言えるのです。
広島大学などの研究グループは、今回、日本原子力研究機構が行った大深度ボアホール調査時に採取された地下水試料の研究を行っていました。
ボアホールというのは、地面などに垂直にボーリングで空けた穴のことです。
陸域地下環境は酸素のない嫌気的な環境です。そのため、ここから試料を採取する場合、酸素に触れないよう細心の注意を払う必要があり、研究を進めることが難しい状況になっています。
北海道幌延町は、原子力開発研究機構の深地下層研究施設があり、通常ではアクセス困難な地下環境の研究用試料が採取できる世界的にも貴重なサイトなのです。
こうした利点を活かして、今回の研究グループは有機物を微生物の作用でバイオメタンに変換する研究を行っていて、その中で新種のメタン生成菌3種の発見も報告していました。
今回の硫酸で呼吸する新種細菌の発見は、この研究の同じ試料の中から発見されました。