硫酸で呼吸するのに硫酸がなくても生存できる
研究グループは、メタン生成菌の探索に使われた同じ試料から、他にも新種の細菌が見つけられないかと、試料に含まれる全ゲノムの塩基配列解析を行い、データベースに登録のある他の細菌と比べていったのです。
新種の可能性のあるものが判別されると、研究グループはさらにそのゲノム解析を行ってどのような特徴を持っているかを調べました。
その結果、硫酸で呼吸するという珍しい新種の細菌「HN2T株」を見つけ出したのです。
ちなみに「HN2T」という名前のHとNは、発見地となった幌延(HoroNobe)に由来しているそうです。
ゲノム解析から硫酸で呼吸を行う性質があることがわかりましたが、発見された幌延町の地下環境の水は1リットルあたりの硫酸濃度が5.9mgしかありません。
海水でさえ、1リットルあたりの硫酸濃度が2700mgあるとされているので、彼らにとってはあまりに硫酸が乏しい環境です。
では、どうやって生活しているのでしょうか?
調べていくとこの微生物は、硫酸だけでなく、酸化鉄や二酸化マンガン、腐植物質類似体など、地層中に含まれる硫酸以外の物質も使って呼吸することが可能だとわかったのです。
私たちは酸素を使って呼吸をしていますが、この細菌の場合、その酸素に当たるものが硫酸です。
しかし、硫酸が無い環境の場合も、別のもので代用して呼吸し生き延びることができるというのは、かなりさまざまな環境に対応して棲息できることを意味しています。
私たち人間に比べて、微生物の生存能力の強さが、こうしたところにも垣間見えます。
この新種細菌はメタン生成菌と同じ試料中から発見されたことから、将来的にはエネルギーとして利用できるメタン生成の効率化などに役立つ知見が得られる可能性があるといいます。
地球には、まだまだ不思議な性質を持った生物が潜んでいるようです。