毒人間はどうしたら誕生するのか?
私たちがヘビやクモのような猛毒をもつ動物の仲間入りをする可能性はきわめて低いですが、毒性をもつ方向に進化することは理論的に可能です。
バルア氏は「毒をつくるための土台はあるので、あとは進化次第です」と話します。
しかし、それはやはり現実的ではないでしょう。
毒はふつう、獲物を仕留めたり、天敵からの防御の手段として進化するものです。
どのようなタイプの毒が進化するかは、その生物のニーズや生存状況に大きく依存しますが、安定して食料が手に入り、天敵もいない人間は、毒をもつ必要性がまったくありません。
また、毒の生成にもコストがかかります。
タンパク質を折りたたんで毒素をつくるには多大なエネルギーが必要であるため、使わないと毒性はとても抜けやすいのです。
例えば、ウミヘビの中には、毒腺があるものの、退化してすでに無毒化されている種がいます。
それは生きた魚を狩る習慣から、魚卵食に切り替えたためです。
人間が毒を得るには、あまりに文明的でありすぎますし、毒の要らない強固な社会がすでに構築されています。
その一方で、もしも大規模な戦争か災害が発生して社会が崩壊し、弱肉強食の時代が来るなら、毒性をもつ人類が現れることもあるかもしれません。