ストレスホルモンは発毛に必要なタンパク質(Gas6)を減らしてしまう
副腎が分泌する発毛抑制物質は何か?
研究者たちが調査を行った結果、発毛にかかわる物質の正体が、人間のコルチゾールに類似したコルチコステロンというホルモンであることが判明しました。
コルチゾールやコルチコステロンはストレスに最も関連深いホルモンとして知られており、ストレスの「バイオマーカー」として様々な研究で用いられています。
バイオマーカーとは病気の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のことです。
そこで研究者は試しに、ストレスのないマウスに対してコルチコステロンを注射。
その結果、コルチコステロン注射を受けたマウス発毛量が減少してハゲに近い状態になったことが確認できました。
次に研究者たちは、このコルチコステロンに反応する細胞を、マウスの体から探し出しました。
すると、「真皮乳頭細胞」と呼ばれる毛を支える細胞がコルチコステロンに反応し、毛の成長に重要な役割を果たす「Gas6」と呼ばれるタンパク質の分泌を抑制していることがわかりました。
加えて逆にGas6を過剰に発現させるように遺伝子治療を施されたマウスでは、ストレスが多い環境でも発毛量を維持することが可能であることも示されます。
以上の結果から、
①ストレスの多い環境が副腎からコルチコステロンを放出させる
②コルチコステロンが真皮乳頭細胞に作用する
③発毛にとって重要なタンパク質であるGas6分泌が減る
④発毛サイクルが休止期に入る
という一連の流れが解明されました。
ストレスとハゲに関しては様々な研究が行われていますが、その原因から細胞や遺伝子、タンパク質レベルまでの一貫した因果関係を示せた例は珍しく、今回の研究は革命的だと言えます。