分解酵素をあらかじめ埋め込んだプラスチック
新しいプロセスは、ポリエステルを食べる酵素をプラスチックの製造過程で埋め込みます。
この酵素は、シンプルなポリマーに包むことで保護されていて、酵素が崩れて役に立たなくなることを防いでいます。
熱や水にさらされると、酵素はポリマーの覆いを脱ぎ捨てて、プラスチック化合物を構成要素に分解し始めます。
さらにポリ乳酸(PLA)の場合は乳酸に還元され、生分解を行う土壌微生物の餌になり、堆肥化されていきます。
この技術で作られたプラスチックは、最大で98%が低分子に分解されたとのこと。
また、今回の研究では、分解酵素をプラスチック全体に埋め込んだことで新たな利点が生まれています。
下の画像の緑の粒は、リパーゼなどの酵素を示しています。
通常これらの酵素はプラスチックのポリマーを表面から分解します(左上)。
しかし、ランダムにポリマーを切り刻んでしまうため、このプロセスではマイクロプラスチックが残ってしまいます(右上)。
今回研究チームは、酵素をプラスチック全体に埋め込みました(左下)。
この酵素はランダムなヘテロポリマー(図中で色付きボールの鎖)で保護されていて、鎖の末端付近に固定されています。
このため、プラスチックは使用中は完全性が維持されます。
しかし、熱や水分などの適切な条件にさらされると、酵素は活発になりポリマー鎖の末端から順々に噛み砕いて分解していきます。
酵素は、プラスチックを顔料で着色するように全体にまんべんなく浸透されます。
そのため、酵素が隣り合うポリマーを食べ尽くすことで、素材全体が崩壊しマイクロプラスチックが残りません。
通常ならバラバラになってしまう酵素を、優しく包み込み結合させ機能させた点が、この研究の革新的な部分です。