風より速い「風力ヨット」の仕組みとは?
こちらが、勝負のきっかけとなった動画です。
動画内で使用されたのは、空気力学者で熱心なカイトサーファーでもあるリック・カヴァラーロ氏が製作したランド(陸上)ヨット「ブラックバード号(Blackbird)」です。
カヴァラーロ氏によると、ブラックバード号は風だけを加速源として、風速自体を上回るスピードを出すという。
ミュラー氏とチームスタッフは、その真偽を確かめるべく、カヴァラーロ氏の協力のもと、ブラックバード号の実証テストを行いました。
ヨットは帆に風を受けて推進力を得ますが、この時、風向きと平行に風を受けると風速は超えられません。
しかし、カヴァラーロ氏は「風向きに対して斜めに風を受ければ、動力が増して風速を超えられる」と指摘します。
例えば、風船とヨットを競争させるとして、ともに風向きと平行に進めば差は出ません。
ところが、ヨットを風向きに対しジグザグに操作すれば、風船より速く前進できるのです。
カヴァラーロ氏は、この原理を応用して、ブラックバード号のプロペラが常に風を斜めに受けられるよう設計しました。
分かりやすくするため、上の水面の画像を筒状に丸めるイメージをしてください。
すると、その上のヨットは水柱を斜めにグルグルと前進します。
そのヨットを2艘にしたときのイメージがこちらです。
この場合、2艘とも常に風を斜めに受けています。
これをプロペラとして具現化したのが、ブラックバード号です。
このユニークなデザインにより、プロペラが後ろの風からエネルギーを効率よく拾い、前進する力を増大させるという。
実際、ミュラー氏が試乗したテストでは、ブラックバード号が風速の2.8倍の速さを記録したと報告されています。
こうしてミュラー氏は「風力のみで動く乗り物は、風そのものより速く走ることができる」と結論しました。
しかし、動画を見たクセンコ氏が「その結論は間違っている」とミュラー氏に反対しました。
その心は?