細胞塊を直接、胚にする
近年、精子・卵子・受精卵などを使用せずに、幹細胞から直接、胚や胎児を造る試みが活発に行われるようになってきました。
幹細胞は心臓や脳・骨・消化管など様々な部位に変化する万能性を持ちます。
現在、研究者たちの多くは、この万能性を追求すれば、ただの細胞塊を胚や胎児に変えることが可能だと考えています。
しかし数多くの試みにもかかわらず、ヒトやマウスの胚を完全に模倣するには至っていません。
最も成功した「ガストロイド」と呼ばれる疑似胚(ヒトおよびマウスのもの)は、遺伝的には胎児の段階まで達したものの、頭部の構造が不完全であり、限定的な模倣に留まっていました。
今回、バージニア大学の研究者たちは、細胞塊の変化を妨げている原因が、体の前後を決める情報が不完全なせいだと仮定します。
方向性のない幹細胞の塊を頭と尻尾のある「胚」にするには、塊に前後の軸を教える必要がある、とする考えです。
そこで研究者たちは、マウスの幹細胞塊に対して従来のアプローチに加えて、体の前後軸を決める因子(WNT・NODALに加えてモルフォゲンシグナル)を操作してみることにします。
すると、衝撃的な結果が得られました。