世界中の川は人間の薬まみれになっている
今回の研究により、人間から排出された覚せい剤が魚の精神に深く影響を及ぼしていることが示されました。
覚せい剤の「味」を知った魚は、禁断症状を発するだけでなく、覚せい剤が含まれる水に自ら進んで集まるようになってしまいます。
この人間と似た魚の嗜好性は、自然な川の中に不自然な魚の集団を作る可能性があると研究者たちは警鐘をならします。
魚は広い川の中でも覚せい剤の流入源を的確に学習し、より持続的に薬物を探そうとする可能性があるからです。
また人間では、覚せい剤の常習者は食べ物を食べなくなって痩せていったり、危険を顧みず大胆になったり、性欲が減退することが知られています。
そのため覚せい剤に晒された魚も、食べ物を見つけたり、捕食者から逃げたり、繁殖する能力が妨げられる可能性があります。
しかし問題は、川へ流れ込む薬が覚せい剤のみに留まらない点にあります。
人間の体からは覚せい剤だけでなく様々な精神作用がある薬が排出され続け、その量は日々増加しています。
例えばコカインの生涯使用率は、アメリカでは15%、イギリスでは10%と、覚せい剤よりも高くなっています。
またアメリカでは総人口の1割にあたる3000万人もの人々が、抗うつ薬を日常的に摂取しており、膨大な量の薬物が川に流れ込み、ザリガニなどの行動に影響を与えています。
水生生物がこれらの薬剤に反応して行動を大きく変える場合、生態系に甚大な影響が出るかもしれません。