魚は2カ月間で中毒になり断薬で禁断症状も発症した
研究者たちはまず、大きな水槽を用意して、自然な川の覚せい剤濃度(数ナノグラム~数十マイクログラム)を反映する「1リットルあたり1マイクログラム」の濃度になるように覚せい剤を加えました。
そして60匹の魚(茶色マス)を2カ月間この覚せい剤入り水槽で飼ったのち、薬を含まないきれいな水槽に移し10日間様子をみました。
結果、覚せい剤を摂取した魚には禁断症状のようなものが現れ始め、運動性が低下して、一カ所にとどまりがちになりました。
この動きの欠如は、魚がストレスを感じているときにみられる現象です。
覚せい剤は脳内のドーパミン分泌を増やして快楽を発生させますが、使い続けているうちに脳はドーパミンまみれを普通の状態だと勘違いし、自分で作るのを控えるようになってしまいます。
この状態で突然、覚せい剤を絶たれると、脳は状況に対処しきれず、極度のドーパミン不足に陥ってしまい禁断症状が現れます。
ドーパミンをベースにした快楽のシステムは多細胞動物で広く共有されていることが知られています。
そのため研究者たちは人間と同じように魚も断薬によって、ストレスを感じていると考えました。
しかし覚せい剤によって魚が中毒になったかどうかを確かめるには、より効果的な実験方法がありました。
断薬でストレスを感じている魚に、再び覚せい剤を与えるのです。
しかし今度は強制ではありません。
ここまでの実験では、魚は強制的に覚せい剤漬けにされてきましたが、研究者たちが考案した次の実験では、魚は自ら進んで覚せい剤を選ぶことができるのです。