歯の喪失が多いほど、認知症リスクも高くなる
日本では現在、高齢化とともに認知症患者の数も増え続けています。
昨年度の統計では、65歳以上の高齢者の16.7%が認知症を患っており、その数はおよそ602万人です。
認知症は脳機能の継続的な低下をともなう病気で、記憶力や思考力、行動や感情、人間関係にも影響をおよぼし、日常生活を困難にする恐れがあります。
これと並行して、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、65歳以上の約6人に1人がすべての歯を失っているとのこと。
日本の2016年の全国調査では、75歳以上における平均の歯の本数は15.7本と、半数近くが失われています。
これまでの研究ですでに、歯の喪失と認知機能の低下に関連性があることが示唆されていました。
その理由について専門家は「歯の喪失は咀嚼を困難にさせ、それがきっかけで栄養不足に陥り、ひいては脳の神経変性を助長する可能性がある」と指摘します。
ほかにも、歯の喪失の主要原因である歯周病と、認知機能の低下との関係を指摘する研究結果も増えています。
本研究主任のBei Wu氏は「アルツハイマー病や認知症患者の数は年ごとに驚くほど増えており、口内の健康と認知機能との関係をより深く理解することがますます重要になっている」と話します。
そこでWu氏と研究チームは、歯の喪失と認知障害について調査した14の先行研究を対象に、その相関性をメタ分析しました。
分析では、合計3万4074人の成人男女と、4689人の認知機能低下者を対象としています。
そして調査の結果、歯の喪失が多い人は、認知機能障害を発症するリスクが1.48倍、認知症と診断されるリスクが1.28倍になることが分かったのです。
一方で、入れ歯や義歯を使っている人(16.9%)は、使っていない人(23.8%)に比べ、認知症の発症リスクが低くなっていました。
さらにチームは、歯の喪失本数が多いほど、認知機能低下のリスクが高いかどうかも調査。
すると、歯の喪失が1本増えるごとに、認知機能障害のリスクが1.4%、認知症と診断されるリスクが1.1%増加するという結果が示されました。
Wu氏は、この結果を受けて「口内衛生を良好に保つことが、認知機能低下の予防につながることが明確に確認できた」と述べています。
将来の健康な生活のためにも、若いうちから歯磨きや食習慣に留意した方がいいかもしれません。