亜鉛放出の仕組みは受精の基本システムなのかもしれない
受精は精子が卵子と出会う、生命誕生の最初のステップです。
これまでの研究により、受精が起こると受精卵の内部でカルシウムイオンが急上昇することが知られており、このカルシウム信号こそが、受精卵という巨大な単一細胞を胚へと進める次のステップだと考えられてきました。
事実、カルシウムイオンの急増を邪魔すると、受精卵の発育は止まってしまいます。
しかし近年になって、哺乳類の卵子が受精直後に大量の亜鉛イオンを放出することが発見されました。
この興味深い現象は多くの研究者たちの興味を集め、受精と亜鉛イオンの放出にどんな関係があるかが調べられていくことになります。
結果、亜鉛イオンの放出が周囲のライバル精子に対する壁になるだけでなく、受精卵が胚になるために、必要不可欠であることが判明します。
また5年前に行われた研究で、実際に人間の受精卵からも亜鉛イオンの放出が起きていることが確認されました。
そこで今回、アメリカのノースウェスタン大学の研究者たちは、同様の亜鉛イオンの放出が哺乳類だけでなく他の生物でも起きていると考えたのです。
そして研究ではカエルの受精卵を詳細に調べました。
結果、カエルの卵子は表面付近に亜鉛イオンとマンガンイオンを大量に含むポケットを備えており、受精によって外部に向けて放出することが確認されました。
また放出は上の動画のように、精子が結合した部分(左端)から全体に広がるように起こっていました。
哺乳類と両生類が共通の祖先から枝分かれしたのは今から3億年ほど前とされていますが、この研究結果は金属イオンの放出現象の歴史もまた、同レベル以上の歴史があることを示します。
しかし、なぜ卵子は受精によって金属イオンの放出を行うのでしょうか?