全骨格の復元に初成功
発見された翼竜の化石は、石灰岩の板に保存されており、押収時にすでに6枚の板に切り分けられていました。
不幸中の幸いで欠けている部分はなかったため、研究チームは、6枚の石版を組み合わせてCTスキャンし、そのデータをもとに3Dモデルを作成しました。
それにより、石の中に埋まっていた細かな骨格部分も明らかになっています。
本種は、白亜紀(約1億4500万〜6600万年前)の初期に出現した「トゥパンダクティルス属(Tupandactylus)」に含まれる翼竜です。
新種ではなく、2003年に初記載された「トゥパンダクティルス・ナヴィガンス(Tupandactylus navigans)」という種と特定されています。
トゥパンダクティルス属は、ブラジルにある白亜紀の地層に見られる翼竜で、頭頂部に生えた大きなトサカが最大の特徴です。
化石記録としては豊富に見つかっているものの、どれもが骨格の一部分しか保存されておらず、明確な全体像がつかめないままでした。
研究主任のビクター・ベッカーリ(Victor Beccari)氏は「トゥパンダクティルス・ナヴィガンスの頭蓋骨以外が見つかったのは初めてであり、さらに一部の軟組織を含む全骨格が、ほぼ無傷のまま残されているのは前例がなかった」と言います。
これまでの先行研究で、トゥパンダクティルスは「コウモリのような機動性とアホウドリのような滑空能力を兼ね備え、現存する動物でも、彼らの俊敏性に比肩しうるものはいない」と絶賛されていました。
しかし、復元された骨格を調べてみると、首の長さが背骨の半分以上を占めている点や、頭部が大きすぎる点から、持続的な飛行は困難であったことが示唆されています。
また、前腕が短く、後脚が長かったことから、空よりも樹上や陸上での歩行や採餌に適していたようです。
それでも、腕の骨に見られる発達した筋肉の固定部位や、背心骨(ノータリウム)の存在を踏まえると、飛行に必要な機能はすべて備えていたと考えられます。
一方で、頭頂部に見られる大きなトサカは、これまでの仮説と同様に、仲間に対する信号や交尾相手にアピールするためのディスプレイとして機能したと見られます。
ベッカーリ氏は「今回、私たちは、ブラジルで発見された最も完全なトゥパンダクティルスの化石の研究に成功しました。
この驚くべき標本は、彼らの解剖学的構造と飛行のための制約について新たな知見をもたらし、陸上での採餌生態を示唆するものです」と述べています。