ホシザメの「単為生殖」は世界初
単為生殖はめずらしい現象ではなく、専門家によると、2000種以上の生物で確認されているとのことです。
また、脊椎動物では80種以上に見られ、サメでも、シュモクザメやトラフザメ、テンジクザメでの記録があります。
単為生殖はおもに、「オートミクシス(automixis)」と「アポミクシス(apomixis)」の2つの形態に分かれます。
オートミクシスは、母親の遺伝子をわずかにシャッフルして、完全なクローンではないが母親に似た子孫を作るもので、サメでも観察されています。
アポミクシスは、母親の完全なクローンであり、植物でより一般的です。
フロリダ州・モウト海洋研究所(Mote Marine Laboratory)の海洋生物学者であるデミアン・チャップマン氏は「野生ザメの単為生殖は、気候変動や乱獲、捕食、病気などにより、相手となるオスがいなくなったメスの最終手段となります。
一方で、水族館のような飼育環境下では、オスとメスを長期間隔離することで、単為生殖が引き起こされることが多い」と指摘。
続けて「サメの中には、何年もかけて単為生殖による出産を繰り返す個体や、オスに引き合わせたると有性生殖をに戻る個体も観察されている」と述べています。
こちらは、「イスペラ」が生まれた日の映像です。
単為生殖は、オスを必要としないので繁殖に有利とも思われますが、欠点が多いのも事実です。
たとえば、サメの単為生殖はメスのみで行われ、オスが持つY染色体を受け継ぐことができないため、生まれてくる子はすべてメスとなります。
そのせいで子孫の遺伝的多様性が大幅に減少し、病気への耐性も低下します。
そのため、単為生殖で生まれた子は、一様に生存率があまり高くありません。
イタリアの通信社AGIによると、今のところ、イスペラの健康状態は良好で、飼育下での生活も問題はないとのこと。
また同水族館は、イスペラが本当に単為生殖で生まれたのかを確認するため、母子のDNAサンプルを解析する予定です。
遺伝的に単為生殖が証明されれば、ホシザメでは初の記録となります。